名護市長選挙 政府の介入は許されない


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 来年1月19日投開票の名護市長選挙に3人が立候補を正式に表明した。名乗りを挙げた3氏は今後、市民に対して自身の政権公約をさらに明確に示した上で正々堂々と信を問うよう努めてほしい。

 出馬を決めたのは稲嶺進市長(68)、末松文信県議(65)、島袋吉和前市長(67)。市長選の最大の争点は普天間飛行場代替施設の名護市辺野古移設の是非だ。
 稲嶺氏は「海にも陸にも新しい基地は造らせない」として辺野古移設に反対を表明している。末松氏は「県外が望ましいが、基地の固定化はあってはならない。辺野古も選択肢の一つだ」と移設容認の姿勢だ。島袋氏は「辺野古移設なくして北部振興発展なし」として辺野古移設推進を表明する。
 三つどもえの公算となっているのは保守勢力が事実上分裂したためだ。官邸などは名護市長選を辺野古移設実現に向けた重要な選挙と位置付けている。このため選挙戦を有利に進めようと、保守系2人の一本化を模索し、国会議員が相次いで現地入りし、出馬を表明した当人と面談して出馬の再考を求めている。市長選だけをもって辺野古移設の沖縄の民意を測ろうとする動きに映り、違和感を覚える。
 既に知事は県外移設を公約に掲げて当選した。県議会や県内全市町村議会は県内移設反対の決議を繰り返し、県内全市町村長も県内移設反対を表明している。そして現市長の稲嶺氏は2010年の市長選で辺野古移設反対を公約に掲げて当選している。民意は明らかだ。政府の意向に沿った市長誕生を執拗(しつよう)に求める姿はいびつとしか言えない。
 昨年2月の宜野湾市長選では当時の沖縄防衛局長が職員や親族などの有権者リストを作成したり、職員に投票に行くよう呼び掛ける講話をしたりしたことが問題となった。現防衛局長は名護市長選について「(講話など)全く予定していない」と説明しているが、選挙に影響を及ぼすような動きは慎むべきだ。
 また過去の知事選では、政府の官房機密費から選挙資金が一方の陣営に渡っていたことを当時の官房副長官だった鈴木宗男氏が明らかにしたこともある。こうした不当な政治介入は決して許されない。公正な選挙が実施されるよう、名護市民だけでなく、多くの県民が注視する必要がある。