みずほ銀問題 幕引きには程遠い


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 みずほ銀行は暴力団関係者への融資を放置していた問題で、佐藤康博頭取の報酬を半年間ゼロなどとするOBを含む54人の処分を決定した。塚本隆史会長は辞任するが、持ち株会社みずほフィナンシャルグループ会長にはとどまる。

 経営陣の大量処分に目を奪われるが、経営トップ2人が残留するなど厳罰化を避けたのが実態だろう。暴力団融資を把握しながら2年間も放置した責任の所在はあいまいなままであり、問題の幕引きには程遠いと指摘せざるを得ない。
 会見で佐藤氏は「処分は妥当と考える。(辞任の)考えは持ったことはない」と述べたが、国会でも処分が甘すぎるとの批判が出ている。問題発覚後に辞任したが、佐藤氏は安倍晋三首相肝いりの政府の産業競争力会議の民間議員を務めていた。官邸との近い関係がおごりとなり、危機意識の欠如につながっていないか疑問も募る。
 処分に先立ち、同行の第三者委員会は調査報告書を公表した。暴力団融資の報告について「組織として見過ごす体制に陥っていた」と指弾する一方、金融庁検査で「情報は担当役員止まり」と事実と異なる説明をした点については、組織的な隠蔽(いんぺい)を否定した。ただ、取締役会に暴力団融資問題の報告が途絶えた経緯など核心部分は推論にとどまった。任意調査の限界も露呈したと言えるだろう。
 みずほ銀は先月28日に社内処分や再発防止策を盛り込んだ業務改善計画を金融庁に提出した。同庁は5日から実施する再検査で専従検査官を派遣し、追加の行政処分を出すかを検討する方針だ。
 再検査では、意図的な隠蔽がなかったのかを検証し、責任の所在を明確にする必要がある。問題融資は金融庁の検査で発覚したが、みずほの担当者の説明をうのみにし、歴代3頭取など取締役会にも報告されていたことを見逃した。金融当局の検査能力も問われていると認識すべきだ。
 一方、暴力団融資では、新生銀行子会社の新生信託銀行が、系列の信販会社アプラスを通して十数件の取引があったことが新たに発覚した。信販との提携ローンはみずほ銀と全く同じ構図だ。単なるチェック体制の不備で片づけるのではなく、構造的な問題として受け止める必要がある。暴力団との関係断絶に向け、提携ローンも含めた抜本的な見直しが急務だ。