児童生徒実態調査 問われるのは地域力だ


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 小中学生の過剰な部活動や夜型社会などが子どもたちの生活リズムの乱れとなり、学習環境に影響を及ぼす。かねて指摘されてきた沖縄の学力と生活習慣の相関関係があらためて浮き彫りになった。

 県教育庁は県内の小学5年生と中学2年生、その保護者を対象にした生活実態調査の結果を発表した。中学生の4人に3人が部活動に週6日以上参加し、4割が睡眠不足で2割が不眠症の傾向にあることなどが分かった。部活動やスポーツクラブに所属する小学生の18%が週6日以上参加し、休日に7時間以上活動している子も16~17%に上った。
 スポーツが精神面や肉体面など青少年の健全育成に果たす役割は極めて大きい。もとより、文武両道の理念や実践が肝要であることは指摘するまでもないだろう。だが、部活動が子どもたちの生活リズムや学習環境を圧迫することはあってはならず、過剰な活動は本末転倒となりかねない。
 調査では、通学時の車での送迎率が小学生26・2%、中学生33・9%に上る。危険を避ける事情はあろうが、過保護になっていないか。子ども連れで居酒屋で食事をする親も小学生で7・7%、中学生で6・4%いることも分かった。本土では見慣れない光景であり、生活習慣の乱れや夜型社会の一端を示していよう。
 調査は児童生徒が32項目、保護者が28項目と多岐にわたるが、携帯電話やインターネットの使用実態について、もっと詳しく聞いても良かった。厚生労働省の調査では、中高生は夜の消灯後に携帯電話の通話やメールが習慣化し、睡眠不足や不眠の原因になっているとの指摘もある。県内の実態を明らかにすることは不可欠だ。
 子どもの睡眠や食事の質に問題があるが、親の認識にずれがあることも分かった。大人の関心の有無は、子どもたちの自尊感情の低さとも無縁ではない。人は褒められ、認められることで自尊心を育む。自己肯定感の高さと学力に相関関係があることも分かっている。子どもたちと真摯(しんし)に向き合っているか。大人の責任が問われている。
 いずれにせよ沖縄の学力の現状は、複合的な要因がさまざまに絡み合った結果だ。学校、家庭、地域のそれぞれに重い課題がある。県教育庁は調査結果をさらに詳細に分析し、学力向上に向けた明確な処方箋を示してもらいたい。