NSC法案可決 国民を危険にさらすのか


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 日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法案が衆院本会議で賛成多数で可決された。わずか21時間の委員会審議で可決したことに民主主義の危機を感じる。

 安倍晋三首相はNSC法案、特定秘密保護法案、集団的自衛権の憲法解釈変更にこだわる。行き着く先は「戦争のできる国」への変質であり、国民を再び戦争の危険にさらすことにほかならない。
 NSC法案は、外交・安全保障の基本方針を首相を含む4大臣会合で決定することを柱としている。米国などから提供される機密情報を一握りの閣僚と官僚が扱い、密室で政策を決めるところに危うさがある。
 NSCでの議論に関する議事録作成は法案の規定に盛り込まれず、付帯決議で「速やかに検討し、必要な措置を講じる」と言及したのみだ。付帯決議に拘束力はない。政策決定過程を国民やその代表である国会が検証できなくなる。
 NSC法案は、審議入りした特定秘密保護法案と一体だ。秘密法案で「特定秘密」に指定されればNSCの議論の内容は半永久的に検証不可能になる。国民の知る権利は制限されるどころか、知ろうとすれば罰せられる可能性がある。
 ひそかに米軍との間で部隊戦術から国家戦略まで情報を共有する日米軍事一体化が進むだろう。憲法解釈を変更し集団的自衛権を容認すれば自国が攻撃されなくても自衛隊は地球の裏側まで行ける。
 NSCは戦争を指揮した、かつての大本営を想起させる。大本営は帝国陸海軍作戦計画大綱を作成した。大綱の中で沖縄と硫黄島を含む小笠原諸島は、本土決戦の準備が整うまで、できるだけ長く米軍を引きつける方針(「出血持久戦」)だった。沖縄は最初から見捨てられていた。
 この軍事機密は県民に知らされない。新聞は軍の統制下に置かれ軍の都合のいい情報しか載せなかった。「出血持久戦」を命じられた第32軍は「沖縄語をしゃべるものは間諜(かんちょう)(スパイ)と見なし処分する」と規定をつくったが、住民は知らない。
 県民は陣地構築や戦場に動員され、激烈な戦闘に巻き込まれ多数の住民が犠牲になった。しまくとぅばを使ったためスパイ視され日本兵に殺害された住民もいた。
 平和主義、基本的人権の尊重、国民主権という日本国憲法の基本原理を骨抜きにする「悪法」は受け入れられない。