減反廃止 農家の不安払拭が先決

 5年後の2018年度をめどに、コメの生産調整(減反)が廃止される。自民、公明両党が政府案を大筋で了承した。

 減反は1970年に始まった。約半世紀ぶりの農業政策の大転換である。コメを作らなくとも補助金が受けられる仕組みには、農政の矛盾が凝縮されていた。43年間続く中で農業の衰退は否めず、見直しは不可避とする見方が増幅されてきた。
 だが、安倍政権下の産業競争力会議の農業分科会で、民間議員の新浪剛史ローソン最高経営責任者が減反廃止論を唱え、減反見直しが本格論議されてからわずか2週間余しかたっていない。
 早くも小規模零細農家の切り捨てにつながりかねないという懸念が噴き出しており、農政大転換の節目にしては、議論は生煮えのままではないか。
 減反廃止の背後には、環太平洋連携協定(TPP)交渉をにらみ、農業の国際競争力を強くする思惑がある。TPP交渉でコメなどの聖域の関税死守さえ不透明な情勢の中、日本の農業と農村をどう維持し、再生するかという本質論議が尽くされたとは言い難い。減反廃止の拙速感は拭えない。
 減反は、主食のコメが生産過剰となり、価格が下がらないように国主導で実施されてきた。農家収入と農村雇用の安定がもたらされた一方、作りたいだけ作れない生産者の意欲低下やコメ価格の高止まりなどの負の遺産も残してきた。
 減反廃止に向け、減反への参加を条件に、作付面積10アール当たり1万5千円が支給されている現行額を7500円か5千円に引き下げる。北海道で作付面積10ヘクタール以上、他都府県で4ヘクタール以上の大規模農家に限定することが検討され、減反廃止に伴い、その支給を止める案が浮上している。
 要するに、中小零細農家を離農させ、大規模農家に農地を集約することで生産性を高めることが狙いである。対案として検討されている零細農家向けの直接支払制度の制度設計は緒に就いたばかりだ。農家の不安を丁寧に払拭(ふっしょく)すべきだ。
 全国の中山間地の小規模農地で稲作を支えるのは高齢者が大半だ。稲作は洪水防止や景観保全などにも寄与し、集落維持の機能も果たしてきた。地方と農家の声を無視した、中央主導による減反廃止は危うい。農業再生の未来像を示すことが最低限の条件ではないのか。



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