徳洲会選挙違反 地域医療守る原点に戻れ


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 医療法人「徳洲会」グループの選挙活動に捜査のメスが入った。県内でも長年活動している日本最大級の病院組織だ。事実解明のため、捜査に全面的に協力すべきだ。

 昨年12月の衆院選で徳田毅衆院議員=自民、鹿児島2区=の選挙運動員に違法な報酬を支払っていたとして、東京地検特捜部などが公選法違反の疑いで徳田議員の姉2人とグループ幹部4人を逮捕した。容疑者の中には沖縄徳洲会の事務方トップも含まれている。職員や患者ら地元関係者が受けた衝撃は大きい。
 徳田議員は、グループ創始者で元衆院議員の徳田虎雄前理事長の次男。徳洲会では組織を挙げた選挙運動が長年行われてきたとの指摘があるが、特捜部は難病で療養中の虎雄前理事長は逮捕せず、容疑者として在宅のまま調べる。姉2人や虎雄氏はこれまでの事情聴取に関与を否定しているという。
 渦中の徳田議員は6人の逮捕に「事実は重く受け止めている」などと述べるにとどめた。グループが9月に強制捜査を受けて以降、取材に応じたのはこれが初めてだ。
 現金などを受けた運動員らは563人、供与総額は1億4千万円余に上るという。親族が買収の罪で禁錮以上の刑が確定した場合、連座制が適用され当選無効となる可能性が高いが、その前に徳田議員は行うべきことがある。13日に自民党に離党届を提出したが、それで済む話ではない。事件の重大性からも辞職は避けられないと考えるが、まずは有権者の前で全てを包み隠さず説明すべきだ。
 グループには公益性が高いとして税の優遇措置を受けている法人もある。沖縄徳洲会もその一つだが、展開次第では優遇措置の取り消しもあり得る。経営への影響も懸念されるが、医療の質の低下を招くことがあってはならない。
 グループは鹿児島県徳之島出身の虎雄氏が40年かけて築き上げた。「命だけは平等だ」の理念の下に「年中無休、24時間体制」の救命救急医療を掲げて規模を広げたが、「病院建設には政治力が必要」として虎雄氏が政界に進出して以降、選挙運動に全国のスタッフが駆り出された。
 次男が地盤を引き継ぎ、親族主導の運動が強まった結末が今回の公選法違反事件だが、今こそ離島や過疎地医療に尽力してきた原点に戻るべきではないか。うみを出し切り、地域医療の担い手として誇りと使命を再認識してほしい。