秘密法第三者機関 成立の取引にするな


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 機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案の審議で、「特定秘密」指定の妥当性を監視する第三者機関設置の是非が、与野党間の修正協議の大きな焦点になっている。

 だが第三者機関の議論が、法案成立への取引材料に使われるようなことは許されない。その設置だけで、政府による恣意(しい)的な特定秘密の指定やそれを監視する制度の不備など、この法案が抱える根本的な問題の解決につながるとは思えない。
 第三者機関は、日本維新の会が法案の修正協議に当たって与党側に要求した項目の一つ。秘密が適切に指定されたかを事後にチェックする独立機関だ。同党議員の質問に対し、法案を担当する森雅子内閣府特命担当相が12日、設置を前向きに検討する考えを示した。
 だがどこまで本気で答弁したかは疑わしい。そもそも安倍晋三首相は第三者機関の関与について消極的な考えを示していたし、14日には岡田広内閣府副大臣が答弁で「行政機関以外の第三者が(秘密指定の妥当性の判断を)するのは適当でない」と明言した。
 法案をめぐる政府内の議論も不十分であることが露呈した形で、森氏はその後、第三者機関について「謙虚に受け止め検討したいが、具体的にどうするかは今後の課題だ」と答弁を後退させた。
 日本維新が求めた秘密の指定期間を最長30年とする案に関して、自民、公明両党は一定の配慮を見せたが、政府側は「30年を超えても公開できないものは存在する」(森氏)と強調している。
 政府与党が修正に一定の柔軟姿勢を示す背景には、国民の反対が根強い法案の成立を急ぎつつ、一部野党を取り込み強行採決色を薄める思惑があろう。だが政府の答弁も揺れる中、問題だらけの法案に野党が妥協していいはずがない。
 政府による秘密指定を客観的に監査するという視点自体は大切だ。だがそれはむしろ既に行われている悪習の改善にまず向けられるべきではないか。
2002年に防衛秘密の指定制度が導入された防衛省では、07~11年の5年間で3万4千件もの秘密指定文書が破棄され、指定の妥当性さえ検証できない実態がある。
 第三者機関設置が法案成立への落としどころとなることがあってはならない。野党は成立の阻止に全力を挙げ、この国の情報公開の在り方を徹底的にただすべきだ。