「教育改革プラン」 国の愛し方を強要するな


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 文部科学省が小中高校向け教科書の改革実行プランを発表した。歴史関連で政府見解の記載を求める教科書検定基準の改定や教科書無償措置法の見直し、愛国心育成などを重視する改正教育基本法の趣旨の徹底などを盛り込んだ。

 国への愛情の表し方やその濃淡は、個人の思想信条の自由を尊重すべきだ。道徳の教科化の動きも想起すると、時の政権が国の愛し方まで国民に事細かに強要する事態を招かないか危惧する。
 教科書検定基準の改定は、(1)通説的な見解がなかったり、特定の見解を強調したりしている場合にバランスの取れた記述にする(2)政府見解や確定判例がある場合の対応を規定する-との内容だ。
 戦後50年の節目に出された村山富市首相の談話は、先の大戦について「国策を誤り、植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた」とし「痛切な反省と心からのおわび」を表明した。しかし、安倍晋三首相は今年4月、村山談話について「そのまま継承しているわけではない」と発言。その後、基本的に継承すると軌道修正したが、アジア諸国に警戒感が広がった。
 実行プランは、多くの教科書を「自虐史観」と批判し「愛国心教育」を強調する、自民党教育再生実行本部の特別部会の提言に沿った。新基準に基づく教科書検定が、村山談話を否定するような特定の歴史観に左右されてはならない。
 沖縄戦の住民の「集団自決」(強制集団死)が軍の強制・誘導などに起因することは沖縄戦研究の定説で、最高裁判決も認めた。国は史実を歪曲(わいきょく)してはならない。
 八重山教科書問題については、下村博文文科相は「無償措置法の中の共同採択のルールを明確化する」と述べ、採択地区協議会で同一の教科書採択を義務付ける考え。自民党内は育鵬社版教科書を不採択とした竹富町教育委員会を非難する言説が多いが、無償措置法改定にあたっては問題の発端が石垣市教育長による八重山採択地区協議会規定の無視、非民主的な協議進行であった点を忘れてはならない。公正な議論を尽くし政治介入を許さない制度を再構築してほしい。
 安倍政権は史実と真摯(しんし)に向き合うべきだ。日中韓共同歴史研究などで見解の相違を埋め、国際社会も納得する歴史認識を確立して次世代への責任を果たしてほしい。