普天間と自民県連 県民と共に歩むべきだ


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 自民党沖縄県連が重大な岐路に立たされている。米軍普天間飛行場移設問題で、仲井真弘多知事の公有水面埋め立て可否判断や来年1月の名護市長選が迫り、県外移設方針を見直すよう党本部からの圧力が強まっているためだ。

 党本部は県選出の自民党国会議員に対しては離党勧告もちらつかせており、普天間問題に関する県連の再協議にも影響を与えかねない情勢だ。
 仮にここで、自民県連が公約変更、方針転換を図れば、普天間の県外移設でまとまってきた沖縄の民意は揺らぐ。普天間問題は解決どころか、混迷の度を深める。
 県連はいま一度、普天間県外移設で県民の総意として「建白書」を政府に突き付けるにまで至った意義や重みを再確認し、県民の側に踏みとどまるべきだ。
 あらためて言う。危険な普天間飛行場は一刻も早く閉鎖し、返還してもらう。その代替施設として新しい巨大な基地は造らせない。代替施設が必要なら、沖縄以外で検討してもらう。それが戦後68年間、基地をめぐる苦しみに耐えてきた県民の最低限の要求だ。
 過剰な基地負担、理不尽な差別と犠牲を子や孫に残すわけにはいかない。この数年、県民は熟慮、熟議を重ねた末に「県外移設」で不退転の決意を固めてきた。
 そして自民県連は昨年の衆院選で、党本部の方針ではなく民意に沿って「県外移設」を公約に掲げて4人の当選を勝ち取った。この事実を忘却すべきではない。
 普天間県外移設は決して非現実的ではない。米識者らが相次いで普天間の辺野古移設に疑問を呈するなど、米国内でも地殻変動とも言うべき動きが出てきている。
 日本復帰時に米国防総省が、財政難などを背景に在沖海兵隊を撤収し、本国への統合を模索していたことも、オーストラリアの外交文書で明らかになった。
 この時、米軍を引き留めたのが日本政府だ。それは辺野古案を妄信する今日の政府の姿勢にも通じる。方針を改めるべきは自民県連ではなく自民党本部、日本政府の方だ。
 離党勧告をちらつかせて県外移設公約の撤回を迫るのは、公約を支持しその実現を期待した県民の心をも踏みにじる行為だ。
 ここで圧力に屈していては、沖縄の未来は開けない。自民県連や国会議員は民意を信じ、誇りと気概を持って対応してほしい。