燃料取り出し 国が前面に出て廃炉加速を


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 東京電力は18日、福島第1原発4号機の使用済み核燃料プールに保管している燃料の取り出しを始めた。作業は来年末まで続く。

 第1原発は既に1~4号機の廃炉が決まっている。4号機の燃料取り出し開始で廃炉工程の一部が新段階に進んだのは確かだ。しかし、現実は完了まで30~40年かかるとされる廃炉作業のスタートラインに立ったにすぎない。
 今回の作業では、強い放射線を出さない未使用燃料22体を輸送燃料容器に装填(そうてん)する。容器はその後、約100メートル離れた共用プール建屋に移される。作業中に容器や燃料が落下・破損すると、大気中への放射性物質拡散という深刻な事態を招く。東電は「想定外」のトラブルにも対処可能な緻密な計画を立て、作業員の安全に万全を期して作業を着実に進めてほしい。
 政府と東電などが今年6月に決定した第1原発の廃炉に向けた工程表改訂版は、基本原則に「政府は前面に立ち、着実に廃炉への取り組みを進める」と明記した。
 しかし、第1原発では汚染水漏れなどトラブルが多発。1~3号機の原子炉内で溶けた燃料の状態が不明なほか、遠隔操作ロボットの技術開発やコスト算定の未着手といった難題が山積している。廃炉作業は順調とは言えず、今後とも困難を極めるだろう。
 廃炉工程表は、1~3号機の溶けた核燃料の取り出しを従来計画の2021年末から最大1年半前倒し。使用済み燃料プールの燃料取り出しは、原子炉に燃料がない4号機で11月着手などとしていた。これらの工程は妥当か。避難生活を強いられている十数万の福島県民の生活再建を後押しするためにも、工程は絶えず見直すべきだ。
 安倍政権は、廃炉を東電任せにすべきではない。東電に十分な当事者能力があるとは思えない。国が前面に出て、世界の先端技術の参加を求め廃炉を加速すべきだ。
 安倍晋三首相には、原発政策の抜本的見直しを求めたい。全国世論調査で7割前後が脱原発を指向する中、自民党は原発の再稼働や輸出を推進。「原発安全神話」が崩壊し、核廃棄物最終処分場の確保の見通しも立たないというのに、旧態依然とした対応は理解し難い。
 再生可能エネルギーの開発・普及などによって脱原発を進め、持続可能な環境を残すことが為政者の責任であると悟っていいころだ。