自衛隊訓練増 基地負担軽減に逆行する


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 県内米軍基地での自衛隊訓練が急増している。南西諸島の防衛力強化を掲げる安倍政権の方針に沿った形で沖縄の自衛隊強化が進んでいるが、米軍と併せ負担軽減の動きに逆行するのではないか。

 米海兵隊キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の使用は4~9月で117日に上り、半年で2012年度(123日)の同水準となった。12年度は計47日だった米海軍ホワイトビーチの使用も4~10月で41日に上る。
 ハンセンの自衛隊使用は06年の米軍再編最終報告に盛り込まれ、それまで県外演習場を活用していた那覇市の陸自第1混成団(現第15旅団)の訓練が県内でできるようになった。ホワイトビーチでは11年度から訓練を行っている。
 自衛隊と在日米軍による互いの基地の共同使用や、共同での訓練実施などの動きは米軍再編以降、加速している。10月の日米安全保障協議委員会で両政府は、自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力指針の再改定に着手することを合意。南西諸島における自衛隊の態勢強化へ、米軍基地の共同使用をさらに進めることも確認した。
 自衛隊の役割拡大には、尖閣諸島周辺で海洋権益拡大を図る中国をけん制する狙いがあるが、軍事面における日米の緊密化・一体化が結果的に周辺諸国との緊張を高めることを強く危惧する。
 陸海空の3自衛隊は今月、沖縄や九州で3万4千人が参加する大規模な実動演習も行った。敵対勢力に制圧された島を武力で奪い返す離島奪還の訓練とみられている。尖閣問題をめぐる日中関係の悪化を背景に、なし崩し的に機能強化を進めている印象が拭えない。
 米海兵隊は本国の財政逼迫(ひっぱく)や軍事的役割の低下などから、沖縄などの海外駐留を含めた部隊の再編・削減を余儀なくされているが、国防関係者には将来的に在沖米軍の役割を自衛隊に肩代わりさせ、沖縄を軍事戦略拠点として使用し続ける意図があるのではないか。
 自衛隊に対しては不発弾処理など戦後処理への貢献を評価する向きもあるだろう。しかし沖縄戦で甚大な犠牲を払って県民が学んだ「軍隊は住民を守らない」との教訓から、今なお自衛隊に対して複雑な感情があるのも事実だ。
 自衛隊の機能・軍事的役割の強化が県民の負担増につながらないよう、県や市町村は自衛隊による米軍基地利用を注視すべきだ。