辺野古案強要 沖縄はまた捨て石なのか


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 米軍普天間飛行場の県外移設を公約に掲げる自民党県連の翁長政俊会長らに対し、菅義偉官房長官が「県外移設はあり得ない」と述べ、名護市辺野古への移設計画を容認するよう公約撤回を強く求めた。また県外移設を主張し続ければ「普天間が限りなく固定化する」とも述べ、辺野古移設と普天間固定化の二者択一しか選択肢がないような言い方をしている。国はいつまで沖縄に恫喝(どうかつ)と強要を繰り返すのか。

 なぜ「県外移設があり得ない」のか。政府が真剣に検討しなかっただけではないか。民主党政権時代に鳩山由紀夫元首相は自身の政策「最低でも県外」が実現できなかった理由について、県外を困難視し、辺野古移設を支持する閣僚に阻まれたと述懐している。その後の自民党政権では県外移設を模索した形跡すらない。これを理不尽と言わずに何と言おうか。
 元米国務副次官補のラスト・デミング氏は今年8月の琉球新報のインタビューで「もし日本政府が海兵隊を丸ごと本土に移転する具体的な提案をすれば、米側は間違いなく真剣に検討するだろう」と答えている。日本政府が沖縄県以外の自治体に在沖基地の移転に応じるよう説得すれば、県外移設は可能であることを示している。その作業は全くせず、沖縄だけに負担を強いるのは明らかな差別だ。
 翁長県連会長は今年2月、安倍晋三首相来県を前に県外移設の公約について「地方政治の場にいる人間が民意と懸け離れた政治はできない。県民との公約、約束は堅持する。県連は手のひらを返すことはできない」と断言している。ぜひとも信念を貫いてほしい。
 昨年6月の県議会議員選挙で立候補し、無投票選挙区以外で当選した自民党所属の県議は「回答保留」とした1人を除いて12人全員が「県外」もしくは「県外・国外」を公約に掲げている。県議も有権者への責務を果たすべきなのは言をまたない。
 県議会は2010年に普天間飛行場の早期閉鎖・返還と国外・県外移設を求める意見書を全会一致で可決している。県知事、県内全市町村長も辺野古移設に反対を表明し、全市町村議会も決議している。これが沖縄の民意だ。政府が県外移設を拒絶し沖縄に犠牲を強いるのは本土防衛のために沖縄を捨て石にした沖縄戦時の発想と何ら変わりない。そんな不条理は看過できない。