名護市意見案 埋め立ての不当性暴いた 不承認の結論は自明だ


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 まことに論理的な内容だ。名護市が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に対する市長意見の案をまとめた。

 23ページにも上る大部の意見だ。国の埋め立て計画の非合理性を一つ一つ丁寧に突く内容は、説得力に満ちている。計画の不当性を鮮明に暴き出した。
 合理的な指摘の数々だ。正当に受け止めるなら、知事はよもや埋め立て承認などできまい。国も、この意見に論理的に反論できないのなら、潔く断念すべきだ。

 膨大な土砂

 意見案は明快で、意見の一つ一つが論理に裏付けられている。
 最も説得力ある論点の一つは、大量土砂の問題だ。県庁舎70棟分にも上る大量の土砂が辺野古沖と大浦湾の美しい海に投入される。しかもその8割が県外からだ。外来種が混入し、貴重な生態系がかく乱されるのは間違いない。
 対策について埋め立て申請は「外来生物法に準拠した対策を講じる」と抽象的に書くだけだ。外来生物の混入がないか、1700万立方メートルにも上る膨大な土砂から誰がどうやって確認するのか。意見案が指摘する通り、「供給元での駆除」も「駆除の証明」も何一つないずさんさだ。「これでは混入防止はほぼ不可能」という意見案の論理は当然の帰結であろう。
 公有水面埋立法第4条3項は、埋め立てが環境保全に関する国や自治体の計画や法規に抵触しないことを要件としている。国はやんばるを世界自然遺産に登録しようとしているが、登録には、外来種移入阻止に向けた徹底した対策が必要だ。膨大な土砂で埋め立てるのは明らかに矛盾で、国の「計画」に抵触している。
 県も「自然環境の保全に関する指針」の中で、大浦湾の海域を最も厳しい「ランク1」に指定している。その海を破壊する行為は県の指針に反するはずだ。
 国の評価書はジュゴンがこの海域を「利用していない」とし、埋め立てが「存続にあまり影響しない」と結論付けたが、国自身の調査により予定地内でジュゴンの食(は)み跡が確認された。しかし公表はしなかった。絶滅危惧種のウミガメが毎年、辺野古の浜に上陸している事実も同様だ。
 ジュゴンの餌となる海藻藻場も、国は移植するというが、機械移植も手植え移植も失敗している。通常10%以下のサンゴの被度が辺野古は4割に達する点も見ようとせず、評価書は「サンゴ類の生息状況は良好でない」と書く。市意見案はそれらを列挙し、「不都合な真実を隠してきた姿勢は環境影響評価の基本理念の無視」「科学的でも民主的でもない」と指摘した。正鵠(せいこく)を射ている。

住民の安全が最優先

 埋立法第4条1項2号は、埋め立てが「環境保全および災害防止への十分な配慮」を求めている。辺野古埋め立てが「環境保全」への配慮を欠くのは既に述べた通りだが、市長意見案は「災害防止」への配慮も欠く、と指摘する。
 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが配備される事実は、市が指摘するように、「市民が意見を出すことのできない最終段階の評価書で明らかにした」。国が「住宅地上空は飛ばない」証拠として示した台形の飛行経路も、最終段階で楕円(だえん)形となり、宅地上空飛行が判明した。隠蔽(いんぺい)続きの国の姿勢に照らせば、配備後の安全など信用できるはずもない。騒音被害も目に見えている。埋め立てが「住民の安心・安全を保障する地方自治体の最重要責務の遂行を危うくする」という主張はうなずける。
 埋立法第4条1項は埋め立てが「国土利用上、適正かつ合理的」でなければ承認してはならないと定める。そもそも辺野古移設は海兵隊のグアム・豪州移転と整合性がない。内外の識者は他の方策を講じるよう提言している。
 県内移設は「唯一有効な解決策」などではなく、事業は「適切性」を欠く。いかなる観点からも承認できないのは自明であろう。
英文へ→[Editorial]Nago mayor’s written opinion reveals injustices of Henoko landfill