宜野湾市長発言 政府のお先棒を担ぐのか


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 危険は除去すべきであり、たらい回しは到底許されない。宜野湾市の佐喜真淳市長は4日、普天間飛行場の危険性除去に関し「県内、県外、国外を問わず全ての可能性を含め一日も早い閉鎖・返還を図るべきだ」と述べ、辺野古移設を事実上容認する考えを示した。

 佐喜真氏は「どこに移設すべきだと言う権限はない」とも述べたが、「県内」に明確に触れたのは就任後初めてだ。昨年2月の市長選で佐喜真氏は「知事と同じ路線だ。県外を政府に求める」と主張しており、「県内」容認は、事実上の公約破棄だ。
 5日佐喜真氏は方針転換はないと釈明したが、4日の発言は、「あらゆる可能性を排除しない」と公約を撤回した自民党の県関係国会議員や自民県連のロジックと同じだ。有権者を裏切る行為であり、市長を辞職し、正々堂々と信を問うのが筋だ。
 国会議員や自民県連は政府の圧力に屈したが、佐喜真氏には露骨な圧力はなかったはずだ。極めて不可解と指摘せざるを得ない。
 そもそも「辺野古か普天間固定化か」の脅し文句は何も新しいレトリックではなく、民主党を含め歴代政権はたびたび使ってきた。
 ただ、二者択一を迫る固定化発言は威圧的で、沖縄との摩擦を生む。にもかかわらず安倍政権は、沖縄の反発を一顧だにせず、手あかだらけのレトリックを前面に押し出し、国会議員や自民県連に露骨に圧力をかけてきたことが、歴代政権との最大の違いだ。
 佐喜真氏は、国会議員や県連が苦渋の「踏み絵」を強いられる中、県や首相官邸などに出向き、固定化反対を訴え、あまつさえ「どのような形であれ返還を」と発言。菅義偉官房長官からは「辺野古が唯一の解決先」との“答弁”を引き出している。政府と気脈を通じていたとしか思えず、大多数の県民の意思とは異なる誤ったメッセージを全国に発信した行動は軽率で、責任は極めて重大だ。
 佐喜真氏は官邸要請直前の中部市町村会で、「固定化を許さず」とする決議を提案したが、他の首長から「辺野古移設容認の同意語として誤解を与えかねない」として文案が変更された。佐喜真氏の本心がとうに見透かされていたことの表れだろう。
 佐喜真氏は、辺野古移設に執心する政府のお先棒を担いだと批判されても釈明できまい。県民に対する二重の裏切りと心すべきだ。