韓国が防空圏拡大 外交的解決に動くときだ


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 韓国政府は15日から防空識別圏を南方に拡大する。日本と中国が防空圏を設け、韓国が中国と管轄権を争う東シナ海の暗礁、離於島(中国名・蘇岩礁)上空を含む。

 先月下旬に中国が尖閣諸島を含む周辺空域に防空圏を設定したため、ただでさえ東シナ海は緊張が高まっている。こうした中、日中韓3カ国の防空圏が離於島周辺空域で重なり合うことで、新たな緊張を生み出さないか危惧する。
 日中韓3国は、東シナ海域に横たわる2国間あるいは多国・地域間の領有権問題を、決して空には拡大しないでもらいたい。
 前触れもなく防空圏設定を宣言した中国の対応と異なり、韓国は日中両国と米国に民間機には影響がないことを事前に説明しており、その点は評価してよかろう。
 拡大した防空圏は韓国の仁川飛行情報区に一致する形で設定され、日中の領空には重なっていない。韓国国防省の報道官は「国際ルールに合うもので、民間航空機の運航は制限されない」と強調した。
 しかし、各国が防空圏拡大を無秩序に続ければ、いずれ迎撃戦闘機の緊急発進(スクランブル)がエスカレートし、偶発的衝突という最悪事態を招きかねない。そうなる前に外交的解決を急ぐべきだ。
 防空圏をめぐる問題では、米国が日中韓の間でバランサーの役割を果たしている。3カ国を相次いで訪問したバイデン副大統領は中国が設定した防空圏について、日本が主張する「撤回」ではなく、運用停止を求めたとされる。防空圏設定に伴う不測の事態を避けるため、日中両国に危機管理システムを作るよう促している。確かに日中両国あるいは韓国も問題をこれ以上、こじらせてはならない。日中韓は危機管理についての実務者協議を速やかに始めるべきだ。
 尖閣諸島の領有権をめぐって従来の主張を繰り返す中国も、日韓との防空圏問題については「航空の安全と防空圏の秩序維持のための技術的問題について、関係国と意思疎通を続ける用意がある」と柔軟な姿勢を示している。
 実務者協議の開催を急ぐべきだ。領土、歴史認識など難題はあるが、だからと言って航空機の安全運航にかかわる防空圏問題で手をこまねいてはなるまい。この問題に限定してでも早期に日中韓首脳会談を開催し、解決策を見いだすべきだ。3首脳の指導力に期待したい。