「秘密法」世論調査 反対の民意受け廃止探れ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 世論は、国民の「知る権利」に背を向けた、権力の暴走にノーを突き付けている。

 共同通信の全国緊急世論調査で、成立したばかりの特定秘密法を今後どうするかについて、「修正」が54・1%、「廃止」が28・2%で計82・3%に上った。法律に反対は60・3%に上り、「不安」を訴える回答は70・8%を占めた。
 第2次安倍内閣の支持率は前回11月から10・3ポイントも下げて47・6%となり、初めて50%を切った。不支持率は38・4%で、12・2ポイントもはね上がった。
 当然の結果だ。法成立後も廃止を求める全国的なうねりはやまず、法の欠陥への懸念が噴出している。
 支持率が急落した安倍晋三首相は会見を開き、「丁寧に時間を取って説明すべきだった。反省している」と述べたが、遅すぎる。
 法案を審議した衆参両院の特別委員会への首相の出席時間はわずか4時間余だ。反省を口にするぐらいなら、強行採決を避け、廃案か継続審議にすべきだった。後付けの「反省」は、国民の強い批判を意識したポーズにすぎまい。
 結局、首相は「良い法律」と自賛して本音を見せたが、数を頼りに強行採決を連発した政権与党に対する国民の目の険しさを自覚し、法廃止の道を探るべきだ。
 会見で、首相は「通常の生活が脅かされることは断じてあり得ない。今ある秘密の範囲が広がることはない」と強調したが、具体性は全くなかった。
 法案審議の土壇場で、安倍政権は「保全監視委員会」「情報保全観察室」の設立をパッチワークのように打ち出した。首相の会見でも、政府に都合の悪い情報が隠され、恣意(しい)的な運用がなされることへの懸念は払拭(ふっしょく)されていない。
 国民を情報から遠ざける法が成立すれば、政府が「乱用しない」と断言しても、取り締まる側の警察などにとって便利な道具となり、統制国家、秘密国家の色が濃くなる。歴史の教訓である。
 日本が戦争に突き進んでいた1941年に成立した国防保安法はスパイ防止の名目で、国の情報を「秘密」の壁で覆った。柳川平助司法大臣(当時)は「他の目的に利用することは一切致さない」と答弁したが、施行初年度だけで検挙は一般人を含めて59件に上り、憲兵らによる国民生活の監視が一気に強まった。
 柳川大臣の答弁が、安倍首相の釈明と重なってならない。