「県内」容認浦添市長 公約の重みを受け止めよ


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 浦添市の松本哲治市長が市議会で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を容認する考えを表明した。初当選した2月の選挙の際には県外移設を求める考えを示しており、事実上公約に反する答弁だ。

 松本市長はこれまでも選挙時の政策や発言との齟齬(そご)が批判されてきた。政治家の発言、有権者との契約である公約の意味をよく理解していないのではないかと疑う。
 普天間問題で市長は「危険性の除去が最優先されるべきだ。県内、県外、国外を問わず、全ての可能性を検討していくことが重要だ」と答弁した。
 市長選での本紙政策アンケートでは普天間返還の解決策として「国外・県外移設、無条件閉鎖撤去」と回答していた。3月に政府が県に辺野古埋め立てを申請した時には「遺憾だ。辺野古は事実上不可能とする知事の考えに同感だ。これからも県民と思いを一緒にしたい」とコメントしている。
 松本市長は今回、「県内」に辺野古を含むかどうかについては明言を避けたが、記者団に対して「県外が望ましいというのは変わらない」とした上で、「進まないのなら危険性の除去方法を模索するということだ」と説明している。
 自民党県連の方針転換を受けて先に同様の発言をした佐喜真淳宜野湾市長もそうだが、「全ての可能性」と遠回しに表現しているものの、政府・与党が「辺野古が唯一の解決策」と圧力を強めている中での県内容認発言は事実上、重大な公約変更とみなせる。公約を反故(ほご)にするのであれば職を辞し、堂々と有権者の審判を仰ぐのが筋だ。
 松本市長は政党の支援を受けず、保守系現職や自民などの推薦候補を破って当選したが、10月に宮崎政久自民党衆院議員を立会人に保守系市議らと連絡会を結成した。今回の背景に辺野古容認を表明した宮崎氏との接近を指摘する声もあるが、もし政治的保身のための答弁だったとするなら許されない。
 市長はこれまで那覇軍港の移設反対や西海岸埋め立ての見直し公約について見解が揺れ動き、市民の怒りや混乱を招いた。給食費無料化公約などをめぐっても追及されている。
 理想との乖離(かいり)、行財政上の制約など公約実現にはあらゆる困難があろう。だが40代半ばの新しいリーダーに市政の改革・刷新を期待した人々に、今の姿はどう映っているか。市長は公約の重みを再認識し、初心に戻ってもらいたい。