税制大綱 方向性が誤っている


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 向かうべき方向が誤っている。まるで逆だ。そんな感を禁じ得ない。自民、公明両党が2014年度税制改正大綱を決めたが、大企業を優遇し家計、中でも低所得者に大きな負担を求める内容だ。

 そのまま実行されれば景気の腰折れは確実で、現在進行中の格差社会がより深刻になりかねない。国会で徹底論議し、むしろ低所得者優遇へかじを切り直すべきだ。
 低所得者の負担増が端的に表れたのが軽自動車税の増税だ。「軽のユーザーは女性や農漁業者、所得が少ない人。(増税は)自殺行為だ」(城内実自民党外交部会長)、「低所得者に負担がかかり、弱い者いじめだ」(鈴木修スズキ会長兼社長)との批判は的を射ている。
 一方で自動車取得税の減税で中型車や高級車は減税となるから、「弱い者いじめ」をした分、富裕層を優遇する形になる。
 4月には消費税を8%に上げる予定だ。消費税は低所得者ほど負担が重い逆進性がある。増税で逆進性を高めるのに、軽自動車増税でさらに追い打ちをかける。「方向が逆」と指摘するゆえんだ。
 そうした方向性は大綱のそこかしこに表れている。震災復興増税のうち、企業向けの税は1年前倒しで廃止するのに、個人が負担する税の上乗せは続ける、という点が象徴的だ。
 第一生命経済研究所の試算によると、年収500万円台前半の夫婦子供2人の世帯では、消費増税で年7万4千円の新たな負担が生じる。家計の負担増は明らかなのに、5兆円の経済対策はほとんどが企業優遇だ。それでいて予算は、「国土強靱(きょうじん)化」の名の下で「ばらまき」が復活し、インフラ整備に大盤振る舞いする気配である。
 軽自動車増税は自動車族の主張が通った結果だ。「ばらまき」も道路族・土建族復権の表れだとささやかれる。族議員が幅を利かした旧来の自民党が今や完全に復活した感がある。
 政府は、企業の税負担を減らして賃上げにつなげると力説する。賃上げした企業への減税拡充も確かにある。だが、個々の企業の判断に委ねる以上、家計に波及するかは不透明だ。
 むしろ消費増税を見送るか、軽減税率をこの段階で導入した方が家計消費への刺激になったはずだ。国会審議は年明けであり、今からでも遅くない。景気腰折れを避ける方策を徹底的に論議すべきだ。