貧困率最悪 雇用を改善し悪循環断て


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 沖縄の「貧困」が深刻な状態にあることが、山形大学の戸室健作准教授の調査で浮かび上がった。

 所得が国民平均値の半分に満たない人の割合を示す貧困率が、2007年で沖縄は全国ワーストの29・3%で、全国平均14・4%の倍以上だ。働く貧困層「ワーキングプア」の割合も全国ワーストの20・5%で、全国平均6・7%の3倍に上る。
 バブル経済崩壊後の労働市場の規制緩和で非正規雇用が拡大するなど、貧困率の悪化は全国的な課題だ。しかし沖縄は労働環境の変化以前に、高失業率や低所得などが沖縄社会の特質として構造化しているところに深刻さがある。
 しかも貧困下で生活保護の必要がありながら、制度を活用している世帯の割合(捕捉率)は9・8%(全国14・3%)にとどまる。高貧困率で低捕捉率という社会構造はいびつと言うしかない。
 貧困状態の放置は子どもの教育や健康などにも影響する。貧困の連鎖・悪循環を断ち切るために、行政や企業、関係団体などの重層的、横断的な取り組みが必要だ。
 柱となるのはやはり、雇用環境の改善だろう。厚労省の2012年調査では県内の非正規雇用の割合は44・5%と全国一高く、全国平均の38・2%を6ポイント上回る。
 労働分配率の低さも長年指摘されている。県の04年の調査では県内の労働分配率は65・1%で、全国平均の70・7%に比べ5・6ポイント低い。企業収益が労働者の賃金に適切に反映されない傾向も常態化しているのではないか。
 中小企業が多いなどの事情はあろうが、正社員化が進み雇用の場が確保されても、低賃金状態が改善されないのでは貧困の連鎖を断ち切ることはできない。
 常態化した貧困から脱する上で企業側が果たす役割は大きいし、そういった機運を行政の支援策も含め社会全体で広げたい。
 生活保護捕捉率の向上も重要課題だ。生活保護法改正で手続きが厳しくなり、申請を控える事例が増える可能性がある。支援が必要な人の9割が制度から排除されていては、社会全体の貧困度が増すだけだ。
 貧困率については、生活実感をそのまま反映するものではないとの指摘もある。しかし、社会保障の引き締めが強まり消費税も上がる中で、貧困の連鎖・悪循環はより深刻になる恐れもある。県民全体で考え、取り組むべき課題だ。