埋め立て判断 「不承認」の歴史的英断を


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 米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた政府の埋め立て申請に対し、仲井真弘多知事が年内に判断を示す方針だ。「軍事の要石」から「平和の要石」に転換する、新しい沖縄の歴史を切り開けるか。仲井真知事の英断を期待したい。

 こうした動きの一方で米政府高官は日本側に、埋め立て申請は無条件で承認されるべきだとの圧力を強めているようだ。辺野古移設までの間に日本側から、普天間駐留部隊の日本本土への移転や、米軍の運用に制限をかける日米地位協定の一部見直しなどの要求を提示されることへ警戒感があるのだろう。
 しかし、部隊移転を落としどころとするような移設の懐柔策が仮にあるとすれば許されない。そうした小手先の「負担軽減策」がまやかしにすぎないことは、これまでの経緯からも明らかだ。県民は代替基地の条件とされた使用期限15年や基地使用協定など、浮上しては消えた“空手形”を忘れない。
 米政府が無条件の埋め立て承認を求めることは当然想定されることだ。現行移設計画に関与してきた当局者として、交渉相手の日本側をけん制する狙いがあろう。
 言うまでもないが、知事の埋め立て判断に当たって重要なことは、普天間の「固定化」の脅しを冷静に分析し、振り払うことだ。米政府は表向き、埋め立てが認められない場合は普天間を継続使用するとの立場だが、固定化は実は米側にとっても最も避けたいシナリオだ。
 住宅密集地にある普天間飛行場周辺で再び事故が起きれば「住民の支持は壊滅的な打撃」(キャンベル前国務次官補)を受け、日米安保体制そのものが揺らぎかねないことを米側は十分理解している。
 知事は埋め立て不承認を求める公明党県本の提言を受け「内容を参考に結論を出したい」と答えた。
 県選出国会議員らの県外移設公約を力ずくで撤回させ、辺野古移設容認の発表に同席させた安倍政権の強権的手法を、琉球処分と重ねる県民も少なくない。「処分官」に例えられた石破茂自民党幹事長を前に、こうべを垂れる地元代議士の屈辱的な姿を目の当たりにし、県民の間に政権与党への反発が強まっている。
 辺野古移設の是非は戦後68年基地を押し付けてきた差別的処遇と人権侵害を続けるか、その転換に踏み出すかの選択であり、選ぶべきは明らかだ。後世の評価に耐え得る賢明な判断を知事に求めたい。

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