国の直接是正要求 問われるべきは文科省だ


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 国の命じることは、何がなんでも従えということのようだ。八重山教科書問題で、県教育委員会が文部科学省の是正要求に対する疑問点をまとめた質問書を送付する方針なのに対し、同省は「教科書無償措置法に反しており、早急に竹富町に対して是正要求を行うべきだ」と回答する方針を固めた。

 さらに県教委が指示に従わない場合は、竹富町への直接是正要求を検討するという。国が都道府県を介さず、市町村に直接是正要求するのは、前代未聞の異常事態だ。
 県教委がまだ出してもいない質問書に文科省が「是正要求を行うべきだ」とする回答方針を決めたことは、質問書に挙げる疑問点に目を通し、一つ一つ誠実に答える意思がそもそもないと受け取るほかない。また回答後に県教委が従わない場合は、その後に竹富町への直接是正要求という国の強権発動ともいえる方針をこの時点でちらつかせるのも異常であり、極めて乱暴だ。
 県教委が抱く疑問として挙げている根拠の一つが衆参両院の国会付帯決議だ。「是正の要求の発動に当たっては、地方公共団体の自主性及び自立性に極力配慮すること」(衆院)とある。さらに「地方公共団体の運営が混乱・停滞し、著しい支障が生じている場合など、限定的・抑制的にこれを発動すること」(参議院)とある。
 今回の是正要求は地方公共団体の自主性と自立性に極力配慮しているとは到底思えない。さらに現場が混乱、停滞、著しい支障が出ている状況も生じているとも言い難い。竹富町の中学校では静謐(せいひつ)な環境の中で授業が行われているではないか。
 文科省は是正要求の指示を地方教育行政法ではなく、地方自治法に基づいて実施した。地方教育法の是正要求は児童生徒の教育機会の妨げや権利侵害がある場合に限っており、文科省も規定に該当しないと判断している。現場に混乱が起きていないことを認めているのだ。そうであれば文科省の是正要求は国会の付帯決議に反するではないか。
 むしろ竹富町に国が直接是正要求することこそ、現場に混乱を起こし、児童生徒の教育を受ける機会を妨げることになるはずだ。文科省は恫喝(どうかつ)ともとれる強硬姿勢を取り続けるのではなく、国会付帯決議にあるように、地方公共団体の自主性に極力配慮すべきだ。