辺野古に軍港機能 県民欺く不当なアセスだ


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 防衛省が軍港機能拡充の事実を隠し、県民、国民を欺いていた。

 沖縄防衛局が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を目指し県に提出した埋め立て申請で、護岸の長さや弾薬搭載区域の規模がこれまで県に示した計画より拡大し、うるま市のホワイトビーチ並みの機能になったことだ。
 船が接岸する護岸は全長約200メートルから272メートルへ延び、幅は30メートル。この規模は、米海兵隊輸送機MV22オスプレイや海軍エアクッション型揚陸艇の搭載が可能な強襲揚陸艦ボノム・リシャール(全長257メートル、4万500トン)が接岸できる。同揚陸艇の水陸両用訓練が可能な斜路(しゃろ)の整備も新たに図示された。
 安倍晋三首相や菅義偉官房長官は軍港拡充を十分知りつつ、仲井真弘多知事に隠していたのか。知らされていなかったのなら、防衛省の怠慢を厳しくいさめるのが筋だ。
 防衛局は環境影響評価(アセスメント)の手続きで代替基地の軍港機能を否定していた。護岸の一部を船舶が接岸できるように整備するものの、「恒常的に兵員や物資の積み降ろしを機能とするようないわゆる軍港を建設することは考えていない」と説明していた。
 防衛省は「複数の軍艦が停泊できる軍港ではない」と釈明するかもしれないが、そんな詭弁(きべん)は通用しない。辺野古埋め立てに向けた環境アセスは従来、作業が進めば進むほど基地機能が追加される国の“後出しじゃんけん”が市民から問題視されてきたからだ。
 象徴的な例は、オスプレイ配備問題だ。米側は1996年に日本側に配備を通告し、同年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告の草案に明記していた。だが、防衛庁の高見沢将林課長(当時)がその文言の削除を求めたことが米側文書で明らかになっている。
 その後、日本政府は配備についてしらを切り続け、11年12月提出の「評価書」で初めてオスプレイについて記述したのだ。
 こうしたアセスの進め方は辺野古移設への賛否以前の問題として、国民、閣僚、国会を侮辱する詐欺まがいの行為と言わざるを得ない。
 防衛省は県民の人間としての尊厳を傷つけ、日米関係への国民の信頼も著しく毀損(きそん)している。安倍政権は辺野古移設の不当性を直視し、埋め立て申請の撤回はもとより、普天間の閉鎖・撤去、県外・国外移設へ政策を転換すべきだ。