PKO弾薬提供 平和主義の国是を覆すな


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 戦後日本が堅持してきた平和国家の基盤が大きく揺らいでいるとの感を禁じ得ない。

 安倍政権は、国連平和維持活動(PKO)で初めての武器提供を国家安全保障会議(NSC)を開いて決定した。治安情勢が悪化している南スーダンでPKOを展開する韓国軍に対し、国連を通じて自衛隊の銃弾1万発を提供した。
 安倍政権は、政府方針である武器輸出三原則の例外としたが、弾薬を他国軍に提供したのは戦後初めてのことだ。PKO協力法に関する国会答弁でも政府は「武器や弾薬の提供はしない」と明確に否定してきた。政府方針を大きく逸脱し、平和貢献の理念をもないがしろにする行為であり、到底看過できない。
 仮に政府方針を変更することがあれば、政府内での慎重な検討作業を経て、国会で論議されてしかるべきだ。しかしながら今回は、首相、官房長官、外相、防衛相によるNSC4者会合で決定した。国の原則に反する戦後初の判断を4人だけで即決した。これは甚だしい独断専行であり、政策決定の在り方として大問題だ。
 防衛省によると、南スーダン東部の国連施設に避難民が逃げ込み、対立する武装勢力が接近している状況で、警備する韓国軍の銃弾が不足していたとされる。
 官房長官談話は「緊急の必要性・人道性が極めて高い」と武器提供の理由を説明したが、韓国側は「業務遂行に必要な銃弾は持っている。予備で借りただけだ」との見解を示し、説明の食い違いも指摘される。
 首相や官房長官はNSC会合でどのような話し合いがなされたのか、国民に説明する義務がある。現地の治安情勢報告は正確だったのか、検証作業も不可欠だ。単なる例外扱いで、うやむやにすることは決して許されない。
 そもそも安倍政権は今月17日に閣議決定した国家安全保障戦略で武器輸出三原則の見直し方針を打ち出していた。歴代政権が堅持してきた三原則を例外措置で骨抜きにし、武器提供の既成事実化を狙っていると批判されても仕方あるまい。
 安倍政権は集団的自衛権の行使容認に向け、憲法9条を事実上無意味化する憲法解釈変更に強い意欲を示している。首相は平和主義の国是を根底から覆すタブー破りを、これ以上繰り返してはならないと銘記すべきだ。