1票の不平等 司法は毅然とした対応を


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 7月の参院選の「1票の格差」をめぐる全国訴訟の一審判決が出そろった。2010年参院選の前回訴訟で4件あった「合憲」はゼロだったが、司法にはもっと毅然(きぜん)とした対応を示してもらいたい。

 14の高裁・高裁支部に起こされた計16件の訴訟の最後となった仙台高裁秋田支部は「違憲状態」と判断し、無効請求は棄却した。
 参院全47選挙区が対象となった今回の全国訴訟では、1件目の広島高裁岡山支部が初の「違憲・無効」の画期的な判決を言い渡した。「違憲」は東京、大阪両高裁でもあったが、他の13件は「違憲状態」で、全ての判決が最大格差4・77倍を「著しい不平等」と批判している。
 原告側の弁護士は「合憲判断は一つもなく、いずれも非常に意味がある判決」と意義を語る一方で、「岡山支部を除けば十分な理解は得られなかった。『無効』とはっきりと言ってほしかった」とも語った。その不満は理解できる。
 違憲と違憲状態は、国会が著しい不平等を是正するのに必要な「合理的期間」が過ぎていたかどうかの判断で分かれる。違憲判決は国会が選挙制度見直しの必要性を認識したきっかけを09年最高裁判決と定め、今年7月選挙までに是正しなかったことを「裁量権の限界を超えていた」と指摘した。
 違憲状態の判決は、衆院選の格差訴訟で国会の幅広い裁量権を認めた11月の最高裁大法廷判決の判断基準の引用が目立つ。合理的期間について「期間の長短だけでなく、是正措置の内容や検討事項などを総合考慮して評価すべきだ」と最高裁基準に沿って判断した。
 10年参院選に対し、昨年10月の最高裁判決は都道府県単位の選挙区制度の見直しに言及していたが、国会は今年7月の参院選に当たり定数配分を「4増4減」する微修正で対応し、5・0倍だった格差がわずかに改善したにすぎない。
 今回の違憲状態の判決は、国会が次回16年選挙に向けた選挙制度改革を協議している事情を酌量した結果だろうが、あまりに国会に甘くないか。政治の不作為を結果的に追認することにならないのかと危惧する。
 ただ違憲状態とした今回の判決も、「投票価値の平等を図るのは著しく困難な状況」と現行の選挙制度自体の見直しが必要との考えを示している。これ以上、先送りは許されない。国会は司法からの警告を深刻に受け止めるべきだ。