知事承認と世論 「もう、だまされない」 底堅い辺野古ノーの民意


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 「もう、だまされない」。沖縄の未来に禍根を残す県知事の背信と政府の対応の欺瞞(ぎまん)性を、県民は冷静かつ毅然(きぜん)と受け止めている。

 仲井真弘多知事が、米軍普天間飛行場の移設先の名護市辺野古埋め立て申請を承認したことを受けた緊急県民世論調査で、「支持しない」が61・4%に上り、「支持する」は34・2%だった。
 普天間問題の解決手法を問うと、県外・国外移設、無条件閉鎖・撤去が計73・5%を占め、辺野古移設は15・9%にすぎなかった。県内への新たな基地建設を拒む民意は岩盤のように底堅い。
 7割を超える住民が反対する辺野古移設の強行は不可能だ。

安倍政権の狙い不発

 知事再選時に「県外移設」を掲げていた仲井真知事の承認判断を公約違反とみなす回答は72・4%に上った。知事の支持率は過去最低の38・7%に下がり、不支持率は53・9%で、5割を超えた。
 最大懸案である普天間問題で、沖縄県政の舵(かじ)取り役が有権者との契約である公約をいともたやすく放棄したことに、大多数の県民が失望し、憤っている。
 辺野古埋め立てにお墨付きを与えつつ、「県外移設」の公約を維持しているという詭弁(きべん)は破綻し、知事の主張が通用しないことが明白となった。
 基地問題で沖縄の県益に沿った主張をする知事は保革を超えて高い支持率を獲得する傾向にあるが、今回の支持率急落は、歴史の歯車を逆に回して期待を裏切ったことへの拒絶反応だ。知事は、県民世論の厳しさを自覚すべきだ。
 残り任期が1年を切った仲井真知事は「公約違反」を否定し続ける限り、さらに求心力を失い、「死に体」に近づくだろう。
 注目されるのは、自民党県連と所属国会議員、仲井真知事に圧力をかけ、県外移設の公約を撤回させた政府・自民党の対応に関し、「納得できない」が7割を超え、安倍政権への不支持率が54・8%を記録したことだ。
 国会議員に離党勧告をちらつかせて屈服させた政府・自民党の対応は、「21世紀の琉球処分」とも称される。
 沖縄の「自己決定権」を踏みにじり、屈従を強いた安倍政権の強権性は見透かされ、県民に諦めを植え付けようとした狙いは完全に外れた。
 安倍首相が知事との会談で示した基地負担軽減策については、評価しないが約7割に上った。
 仲井真知事は「普天間飛行場の5年以内の運用停止」などについて「最大限努力する」という首相の発言を確約とみなすが、県民はその実現性を既に見限っている。

効力失う「アメとムチ」

 1999年、稲嶺恵一知事が移設先に辺野古を選定し、岸本建男名護市長が受け入れた際に繰り出した15年使用期限の条件は日米政府内で一顧だにされなかった。
 基地負担軽減の核心的な要求がはぐらかされ、消えていった経緯を知る県民は、あらためて政府への不信感を呼び起こされた。
 安倍首相が、2021年度までの3千億円台の沖縄振興予算を約束し、「空手形」との批判を浴びながら示した基地負担軽減策は、沖縄に対する新たなアメの性格をまとっている。その一方で、安倍政権は辺野古移設を強いるムチを猛然としならせ、仲井真知事はそれに陥落した。だが、主権者である県民は、基地受け入れの代償として沖縄振興予算を手当てする「補償型安保維持施策」、アメとムチの沖縄懐柔策の効力が失われていることを深く認識している。
 一方、共同通信の全国世論調査では、対照的に知事の埋め立て承認への評価が56%、辺野古推進への支持が49%に上った。
 沖縄に基地を押し付けて、平然と安全保障の恩恵を受ける国民が多数を占める現実がある。この「人ごとの論理」が息づいていても、地元沖縄の県内移設ノーと政権批判の強固な民意は、辺野古埋め立てを強いる安倍政権に立ちはだかる大きな障壁となるだろう。

→動画 仲井真知事 辺野古埋め立て承認記者会見