「枯れ葉剤」新証言 隠さずに徹底調査せよ


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 猛毒ダイオキシン類を高濃度で含む枯れ葉剤が、1968年~69年にかけて読谷村にあった軍用犬訓練場で定期的に散布されていたことが分かった。米退役軍人で軍用犬看護師として沖縄勤務経験のあるドン・シュナイダー氏(69)が琉球新報の取材に答えた。

 米政府は新証言を真摯(しんし)に受け止め、同訓練場との関連で枯れ葉剤の貯蔵・使用の履歴、軍作業員の健康や生活、環境への影響など、真相究明に直ちに乗り出すべきだ。
 散布された枯れ葉剤は通常、同村の陸軍施設でドラム缶に入れ保管。缶には「エージェント・オレンジ」という枯れ葉剤の一種であることを示すオレンジのしま模様が入っていたという。
 シュナイダー氏は「枯れ葉剤は軍用犬がハブにかまれることを防ぐ目的で、周辺の雑草を管理するために散布された」と明言。当時の状況や使用目的の説明は非常に明解であり、信憑(しんぴょう)性が高い。
 米軍返還跡地の沖縄市サッカー場をはじめ枯れ葉剤の存在を示す物証や証言が相次いでいるが、日米は一貫してこれを否定している。
 米軍に任せれば、その隠蔽(いんぺい)体質からして情報開示は望むべくもない。オバマ政権は、政府の環境担当部局の調査や、日米沖の第三者調査チームの設置などを通じて、県民の疑念を払拭(ふっしょく)するべきだ。
 米政府は昨年、沖縄市で枯れ葉剤の主要成分を含む30ガロンのドラム缶が多数発見された一件で、ベトナム戦当時に貯蔵していた55ガロン容量とは異なるとの理屈で「(枯れ葉剤の)可能性は考えにくい」と説明してきた。検出されたダイオキシン類は水質基準値の280倍、土壌基準値の8・4倍にも上るのに、事の重大性を分かっていない。
 シュナイダー氏は在沖基地では枯れ葉剤を55ガロン缶から30ガロン缶に移し替え、使用していたとも証言した。米軍の説明根拠は破綻した。
 過去に恩納村や北谷町の基地跡地からも有害物質が見つかっている。こうも発見が続くと調査を返還跡地で実施するだけでは不十分だ。既存の全米軍施設で、枯れ葉剤など有害物質の貯蔵・使用実態を徹底的に調査する必要がある。
 ただ、基地内の調査は、日米地位協定が障害となり容易ではない。調査に協力するもしないも、米側の裁量次第だからだ。安倍政権は、不平等な地位協定の抜本改定を米側に強く求めるときだ。