誘客1千万行程表 沖縄観光の理念を示そう


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 1千万人誘客が単なるお題目や夢物語ではなく、現実的にクリアすべき課題であるとの決意表明だと受け止めたい。

 県は、目標に掲げる2021年度の入域観光客数1千万人達成に向け、新年度からロードマップ(行程表)の作成に着手する。1年ごとの目標数値のほか、海外客などの受け入れ態勢や誘客戦略、ハードインフラを含む旅行環境の整備方針などが盛り込まれる見込みだ。
 国際的なリゾート地を目指す沖縄観光が、新たなステージに至るまでの具体的な道筋を描く指針と位置付けられる。
 県は、有識者らを交えた専門委員会を課題ごとに設置するほか、知事や各部長でつくる県観光推進本部などで議論を重ねる方針だ。官民や内外の英知を結集し、実効性のある行程表策定を求めたい。
 これまで県は、単年度ごとの数値目標と具体的な誘客行動計画を定めた「ビジットおきなわ計画」を07年度から策定してきた。ただ、入域観光客数の目標値は一度も達成されたことがなく、かねて「画餅」と批判されてきた。
 しかしながら13年度は目標の630万人、うち海外客50万人の達成が確実な情勢だ。14年1月にも那覇空港の第2滑走路の増設事業が着工されることもあり、戦略的な中長期計画が必要と判断した。
 もちろん行程表さえ作れば、目標が必ず達成できるというものではない。沖縄観光が300万人を達成したのは1991年度だが、13年度の600万人突破まで22年間を要したことからも、向こう8年間で1千万人を達成するハードルの高さが分かろう。
 今後は策定される行程表を踏まえ、「PDCA(計画↓実行↓評価↓改善)サイクル」に基づく不断の見直しが不可欠となる。
 一方、「量的拡大」だけを追い掛けるあまりに手段を選ばず、沖縄観光の理念をないがしろにすることは決して許されない。自然環境を顧みない無秩序な開発や、県民の同意を得ない安易なカジノ導入などだ。
 観光立県を表明した95年の美ら島おきなわ観光宣言は「豊かな自然と独特の歴史・文化の恵みを生かし、自立の精神をはぐくみ寛容と共生の社会を目指す」と高らかにうたう。沖縄観光の理念に基づく「質的向上」の取り組みこそが、目標達成への近道であることを県民の共通認識としたい。