119番一元化 救命、防災の生命線強化を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 東日本大震災を受け、救急搬送や火災だけでなく、地震、津波などの大規模災害に対応できる消防通信網の強化が課題となる中、県内の119番通報を一括して受け付け、各消防本部に出動を命じるセンターが設けられる。

 2016年5月に始まる消防救急無線のデジタル化をにらみ、県内の26消防団体(37市町村)が参加し、嘉手納町にあるニライ消防本部に「県消防共同指令センター」(仮称)が設置される見通しとなった。
 センター設置とデジタル化に伴う無線機器の整備費は計55億円に上る。人口規模に応じた経費の分担で負担を軽減すると同時に、大規模災害時の相互応援態勢の強化を図る。通信指令に携わる約100人の職員のうち、約70人を振り向けることで現場職員を厚くする効果も見込める。
 海に囲まれた離島県・沖縄は、自らの力で防災力を高め、持ちこたえねばならない。消防による救命救急活動にとって、無線による通信は情報連絡の生命線である。
 那覇市、沖縄市、浦添市、本今(本部町・今帰仁村)の消防は参加しないが、県人口の約6割を占める範囲で消防通信指令が一元化される意義は大きい。
 県消防通信指令施設運営協議会が今月末にも、参加消防団体と協定書を取り交わす見通しだ。
 費用対効果との兼ね合いなどから、指令を出す専任職員がいない離島市町村が12に上る現実がある。一元化によって離島消防にも的確な出動指令が届くメリットがある。
 119番通報の受理一元化が防災、減災の実効性を高めるため、関係機関は詰めの作業を丁寧に進めてもらいたい。
 本格運用は17年度になる見込みだが、乗り越えねばならない課題も多い。現場を間違うなどの指令ミスで救える命を救えなかったケースが全国的に相次いでいる。
 山口県岩国市は119番通報を受けた電話の位置情報から住所を割り出す新システムを導入したが、昨年末、別人宅を指示したり、数百メートルも離れた場所が表示されて到着が遅れ、搬送を求めた2人が死亡した。
 沖縄特有の台風、地震、津波などの大規模災害に備えた万全な態勢を構築せねばならない。土地勘のない地域でも的確な出動指令がなされるよう、指令システムと職員の能力の双方が向上した、総合的な消防力強化が求められる。