知事年頭訓示 説明責任を果たしていない


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 官公庁や多くの企業は6日、仕事始めだった。仲井真弘多知事も年頭の職員訓示と記者会見に臨んだ。冒頭に米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画に伴う埋め立て申請の承認理由をあらためて説明するという、異例の訓示だった。

 特に普天間飛行場の5年以内の運用停止については、安倍晋三首相が知事と「認識を共有する」と述べたと、会見で再三強調。この部分の首相発言は閣議決定のない口約束であった。それなのに知事は辺野古埋め立てが進むか否かにかかわらず、普天間の5年以内運用停止を「当然です」と強弁した。本当にそうなのか。
 県外移設公約と承認判断の齟齬(そご)をあらためて問われると「何も私の公約とは違っていない。私はあっちは駄目だとか、こっちは駄目だとか言っていない。私はもともと辺野古というのは時間がかかると言っている」と釈明した。
 自身の発言を誤解する報道機関や県民がおかしい-と言わんばかりの説明は詭弁(きべん)の極みだ。
 県民が「知事も県内移設反対」と受け取っていることを知りながら、これを放置してきたのであれば一種の詐術である。政治責任は極めて重い。知事は、自らの発言で県民の県政不信がさらに深刻化しかねないことを自覚すべきだ。
 埋め立て承認は実務的な判断よりも、知事の政治判断が優先された。県庁職員の間にも動揺が広がっている。
 知事は職員に向けて「皆さんは県民の宝、財産として県庁に入ってこられたわけだから、初心を忘れず、そしてまた未来、ビジョンを忘れずに、仕事に取りかかっていただきたい」と述べた。
 県民からすれば、知事の方が公約を撤回し、初心も県の将来ビジョンも忘れたのではないかとの疑念を拭えない。知事発言を聞いて、得心が行く県民がいるだろうか。
 会見はまるで説明になっておらず、疑問点が多い。例えば基地問題と振興策とのリンクを強く否定してきたのは知事自身だ。それなのに今回なぜ、政府の基地負担軽減策を、振興策に絡めながら手放しに評価するのか、全く不可解だ。
 近く開かれる臨時県議会で、知事は140万県民にも県庁職員に対しても説明責任を尽くさねばならない。水面下での取引を含め、県議会や県民からのあらゆる疑問に進退を懸けて答える義務がある。