那覇市議処分検討 主客転倒もはなはだしい


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 名護市辺野古の埋め立てを承認した仲井真弘多知事に、那覇市議会が抗議の意見書を可決したことに関し、自民党県連は賛成した所属市議を処分する検討に入った。

 県連は党本部のどう喝に屈して県外移設の公約を覆したが、市議らは意見書に賛成することで公約を堅持した。有権者との約束を破った側に、守った側を処罰する資格があるだろうか。主客転倒もはなはだしい。
 意見書に賛成しないよう水面下で圧力をかける県連の行為は、党本部の手法と酷似している。政治家なら公の場で議論すべきだ。
 知事が承認を表明した直後の琉球新報世論調査によると、県民の72・4%が「公約違反」と認識している。県外・国外移設、無条件閉鎖・撤去を73・5%が支持している。那覇市議会の意見書可決は、民意をくみとった行動であり政治家としての見識を示した。
 これに対し県連は、所属市議に採決を思いとどまるよう促し、個別に切り崩しを図ってきた。「市議会にまで手を突っ込むのか」と反発し、党籍を抜ける覚悟の市議もいるという。
 2010年の知事選以来、保革を問わず大多数の県民がオスプレイ撤去や辺野古への新基地建設反対で一致したのは、70年もの間、軍隊によって沖縄住民の基本的人権が踏みにじられてきたからだ。
 海外識者29人が発表した辺野古移設の中止と普天間飛行場の即時返還を求める声明文は、沖縄の現状を「軍事植民地状態」と規定している。植民地には宗主国の意向を実行する協力者(植民地エリート)が存在する。宗主国は植民地の民意が一つにならないように絶えず内部を分断し互いに対立させる。政治力を弱体化させて支配しやすくするためだ。
 米国が沖縄を直接統治していた時代、当時の親米与党が植民地エリートに当たるだろう。日本に施政権を返還した後は日米共同で「軍事植民地状態」を維持してきた。
 辺野古移設に転換し、従わない所属市議を処分することで他市町村議会へ飛び火させない。県連の行為は「軍事植民地状態」継続に手を貸す植民地エリートそのものではないか。
 沖縄の戦後政治は、民意が絶えず分断され保革が対立を繰り返してきた。今こそ過去の教訓に学び、普天間飛行場の即時閉鎖・撤去と県外移設の実現という共通の目的に向かって協力し合う時だ。

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