第2滑走路 空港の未来像を語ろう


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 県と那覇港管理組合は、那覇空港の滑走路増設に向けて沖縄総合事務局が提出した埋め立て申請を承認した。那覇空港の滑走路増設は主要産業である観光をはじめ沖縄経済に大きな影響を与えよう。空港の未来像の議論を深めたい。

 第2滑走路は2700メートル。2019年12月の完成、20年3月末の使用開始の予定だ。県は貴重なサンゴ類や海草藻場の移植計画などを考慮し、埋め立てを承認したが、自然保護団体からは抗議声明も出ている。
 埋め立て海域のうち県環境保全指針が「厳正な保護を図る」と位置付けるランク1区域は4分の1に及ぶ。自然保護団体からは環境への影響の懸念や保全策の詳細な公開を求める声が上がっていた。
 並行して審査が進んだ米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古埋め立てに関心が集中し、那覇空港の論議が十分でなかった面もあるが、万全の環境保全策が求められていることは言うまでもない。
 那覇空港の国内線旅客数は羽田、新千歳に次ぐ第3位。自衛隊も利用する軍民共用空港でもあり、2010年代に飽和状態に達することは90年代から予測されていた。
 政府は新年度の滑走路事業費330億円を沖縄振興予算の枠内に計上し、結果的に予算額が膨らんだが、本来は国土交通省予算から捻出されるべきもので、これをもって沖縄予算を厚くしたとアピールするのは筋が違う。需要が逼迫(ひっぱく)する国管理空港の整備に予算を計上するのは当然のことなのだ。
 気になる試算もある。自衛隊機の年間利用回数は2030年度には約3万回と現在から2割以上増え、F15戦闘機は約1万5千回と5割増となるという。南西諸島での即応態勢強化へF15を増強するためだが、民間需要増に対応する空港拡張が軍事機能強化につながるようなら主客転倒も甚だしい。
 国内4位を誇る那覇空港の貨物取扱量は東日本大震災後の減少から昨年、3年ぶりに増加した。那覇を中継拠点としたアジア向けの国際貨物事業はさらに発展する可能性を秘める。
 滑走路の増設は、県が年間1千万人の目標を掲げる観光客誘致などにも大きな弾みとなろうが、新たな沖縄振興計画が掲げる「アジアとの懸け橋」の具体化や、そのための施策展開について、再度議論を深めるよい機会だ。空港拡張後の冲縄の経済・社会を展望し、知恵を出し合いたい。