政府・与党発言 専制国家になったのか

 閣僚が、まだ投票されてもいない自治体の選挙について、あらかじめ選挙結果を無視すると言い募る姿は、尋常ではない。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点の名護市長選をめぐり、菅義偉官房長官が「(選挙結果にかかわらず移設を)粛々と進める」と述べた。小野寺五典防衛相も「名護市という地方の選挙だ。今後とも工事を含めて進めていく」と強調した。
 名護市の民意がどうであれ、委細構わずごり押しするという意思表明にほかならない。民意を尊重するのが民主制の根幹だろう。これでは「沖縄には民主主義を適用しない」と宣言するに等しい。
 日本はいつから中世の暗黒専制国家になったのか。近代国家だと自認したいのなら、政府は直ちに強権的な姿勢を改めるべきだ。
 それにしても政府・与党の言動は国際社会におよそ通用するまい。石破茂自民党幹事長は「基地の場所は政府が決めるものだ」と言い放った。だが石破氏も閣僚も、国連の国際人権規約を読み返した方がいい。
 外務省によると、これは「人権諸条約の中で最も基本的かつ包括的なもの」だ。規約第1条にはこうある。「すべての人民は、自決の権利を有する」。
 規約の中の「社会権規約(A規約)」第5条はまた、規約が定める権利・自由を国が破壊・制限すること自体を禁じている。政府の態度はこの規約に違反していよう。
 例えば、あの破局的な原発事故を被った福島で、立地市町村の首長の反対を押し切って原発を新設する工事が可能だろうか。政府は、全国どこであろうと不可能なことを、沖縄でだけはできると言っているかのようだ。
 2010年3月の国連人種差別撤廃委員会の日本政府に対する勧告は「沖縄への軍事基地の不釣り合いな集中」を指摘した。「沖縄の人々が被っている根強い差別」に懸念を表明してもいる。名護市民には基地に関する決定権が全くないかのような政府・与党の言動は、この勧告の精神も踏みにじっている。
 軍用機の墜落事故や米軍犯罪を持ち出すまでもなく、沖縄の戦後史は、基地が住民の命を脅かしてきた事実の連続だ。住民の命と人権を守るのは、首長の初歩的かつ最も重要な仕事であるはずだ。そんな仕事を否定しようとする政府の姿勢は、許されない。