辺野古承認訴訟 知事出廷させ実質審理を


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 仲井真弘多知事による辺野古埋め立て承認の取り消しを求め、辺野古住民ら194人が那覇地裁に提訴した。同時に承認の効力の一時執行停止を申し立てた。

 承認の根拠を明確に示さず県外移設の公約を覆し、新基地建設を認めた知事の行政責任は重い。三権の一つである司法の場で法的妥当性を徹底的に吟味してもらいたい。
 行政処分の取り消し訴訟はまず、原告に違法性を問う資格(原告適格)があるか否かが問われる。今回の原告には漁業者やエコツーリズム事業者など埋め立て工事で直接生計に影響を受ける人々と、生活環境に被害を受ける地域住民が参加している。適格性はあるはずだ。那覇地裁は、提訴を「入り口」で退けず実質審理すべきだ。
 訴状は第一に、埋め立てが環境保全に十分配慮するよう定めた公有水面埋立法4条1項2号に違反すると指摘している。飛行場建設で騒音被害が増大し、ジュゴンやウミガメの保全措置は「実効性に乏しい」などの理由を挙げる。
 国の環境影響評価書(補正前)に対する知事意見は「自然環境の保全を図ることは不可能」と指摘していた。国の見解は「保全対策になっていない」と専門家から酷評された。
 環境保全は「不可能」とした知事が、なぜ埋め立てを承認したのか。埋め立て承認に向け、知事と官邸が県民や国民には見えない場所で協議を重ねていたことが明らかになっている。知事と菅義偉官房長官を出廷させて密室協議の内容を説明させるべきだ。
 訴状はまた、国土利用上適正かつ合理的であることを条件とする同法4条1項1号について次のように指摘している。普天間の危険性除去のために移設するのではなく、「新たな基地建設のために普天間の危険性除去を駆け引きの道具にしているに過ぎない」から「埋め立ての必要性はない」。
 一方、執行停止申し立ては、埋め立てによって良好な自然環境を半永久的に失い、騒音などで人体に生じる影響は金銭では回復できず、損害は固定化すると主張している。
 戦後69年間、基地被害にさいなまれてきた県民が、命と暮らしを守り、豊かな自然環境を将来に残すために提訴したのである。これは公共の利益を実現しようとする行為にほかならない。裁判所に重ねて実質審理を求める。