東京都知事選 原発政策こそ重大な争点だ


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 細川護熙元首相が脱原発を掲げて東京都知事選への立候補を表明し、自民、公明両党が支援する舛添要一元厚生労働相らと争う首都決戦の構図が鮮明になった。選挙で原発問題が重大な争点になるのは間違いない。大都市部の無党派層の支持獲得を目指し、各陣営が競い合う選挙戦が展開される。

 東京都は東京電力の大株主だ。さらに都は日本国内の最大電力消費地として原発の恩恵を最も受けてきた地域だ。原発立地地域の安全性確保などについて、消費地の都民が真剣に考えることは当然だ。知事選で原発議論が深まることは意義がある。
 ところが政府から原発の争点化に否定的な声が出始めている。安倍晋三首相はエネルギー政策について「国民みんなの課題だ」と述べ、国政レベルの課題との認識を示した。甘利明経済再生担当相は「エネルギー政策はオールジャパンで考えないといけない。日本全体を見ることができる主体が責任をもって進めていくことだ」と主張した。それなのに政府は原発活用を明記したエネルギー基本計画の閣議決定を当初の1月から先送りする方向だ。脱原発を主張する細川氏との争点化を避ける狙いのようだが、エネルギー計画が国政の問題だというのなら、予定通り閣議決定するのが筋ではないか。
 東京電力の新たな総合特別事業計画が15日に政府の認定を受けた。しかし計画は当初から「画餅」に終わる可能性をはらんでいる。地元の同意が得られる保証がないまま新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働を織り込み、黒字化定着のシナリオを作り上げているからだ。
 認定翌日、東電社長との会談で新潟県の泉田裕彦知事は地元同意がないままの再稼働について「モラルハザード(倫理観欠如)の計画だ。株主責任、貸し手責任を棚上げにしている。(安全が軽視されて事故の)危険性が高まる」と批判した。当然の指摘だ。
 東日本大震災に伴う福島第1原発の事故を受け、現在も多くの住民が避難を余儀なくされている。知事選は原発の電力に暮らしを支えられてきた東京都民が被災者(地)と向き合い、今後のエネルギー政策について考える絶好の機会だ。立候補を表明している前日弁連会長の宇都宮健児氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏、発明家のドクター・中松氏ら各氏も堂々と原発政策で論戦を展開してもらいたい。