ハムレ氏発言 在沖海兵隊撤退の提起を


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 画期的な発言だ。米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長が、米国外での米軍の長期大規模駐留は住民との摩擦を招くとして「違う方向性がないか再考の必要がある」と述べた。

 「常時駐留なき安保」の発想と言える。日本政府は重く受け止めるべきだ。すると在日米軍駐留見直しは論理的必然であるはずで、在沖海兵隊の駐留廃止を大胆に提起すべきだ。
 沖縄にとっては追い風だ。基地撤去を求める県民世論の根強さをあらためて米国へ発信し、抜本的な駐留見直し論形成へつなげたい。
 日米関係はごく少数の「知日派」が大きな発言権を持つ。ハムレ氏はアーミテージ元国務副長官やナイ元国防次官補らと並ぶ知日派の重鎮であり、国防副長官なども歴任した国防・外交の専門家だ。
 しかも保守系シンクタンクの代表格で対日政策に強い影響力を持つCSISのトップである。昨年2月、政権復帰後初めて米国を訪問した安倍晋三首相が「日本は戻ってきた」と演説した場所がCSISだった。演説の冒頭、首相が「ジョン」と呼び掛けた相手がハムレ氏だ。発言の重要性を、日本政府は知っているはずである。
 ハムレ氏は海外への米軍の配置には恒久的駐留と一時的派遣の二種類があるとし、アラブ首長国連邦の例を挙げて一時的派遣でも「非常に強いプレゼンスを地域で維持できる」と強調。一方で、恒久的駐留は「時間がたつごとに世界中で周辺住民から歓迎されない存在になる」と指摘した。
 その例として、具体的な地名としては唯一、沖縄に言及した点が重要だ。常駐廃止論は一般論として述べているが、沖縄を念頭に置いた発言とみていい。
 アーミテージ氏もかつて「プランB(代替案)を持つべきだ」と述べ、キャンベル前国務次官補らも「異なる方向の模索が必要」などと述べている。米財政が逼迫(ひっぱく)している以上、駐留見直しはむしろ米国内でも主流の意見なのだ。
 映画監督のストーン氏ら識者が辺野古移設反対の声明を発し、「世界最高の論客」チョムスキー氏は「沖縄の未来は県民が決めるべきだ」と述べた。沖縄の世論には国際的後押しがある。その点も銘記しておきたい。
 ハムレ氏は近く駐留見直しの形態に関する案を出すとも述べている。在沖海兵隊撤退の端緒にもなり得る。注目したい。