東電再建計画 破綻処理含めて再検討を


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 「モラルハザード(倫理観の欠如)の計画だ」と厳しく批判した泉田裕彦新潟県知事の一言に尽きるだろう。政府が認定した東京電力の新しい総合特別事業計画(再建計画)のことだ。

 原発再稼働を前提とした再建計画は、何よりも最優先されるべき安全を二の次にしたも同然であり、「画餅」でしかない。柏崎刈羽原発を抱える泉田知事が「安全文化の観点でおかしい」と憤るのは、至極当然だ。
 再建計画は、柏崎刈羽原発が7月以降に順次再稼働すると仮定。再稼働が大幅に遅れる場合は今秋に最大10%の抜本値上げが必要になるとした。値上げか再稼働かの二者択一を迫る手法は、料金を“人質”にしたどう喝そのものだ。
 東電の広瀬直己社長は、泉田知事をはじめ各方面からの反発を受け、再稼働時期について「仮置き」と釈明し、料金値上げについても「即値上げとはならない」と軌道修正した。地元新潟県の同意はおろか協議もないまま、政府認定を急いだのは泥縄のそしりは免れない。安全よりも経営を優先する東電の企業体質が何ら変わっていないことを示していよう。
 一方、再建計画では、中間貯蔵施設整備で1兆1千億円の費用が国の負担になったほか、除染費の一部2兆5千億円を原子力損害賠償支援機構を通じて国が保有する東電株の売却益で賄うとした。
 国費を投入する以上、株主責任や金融機関などの貸し手責任が問われてしかるべきだが、計画ではすっかり棚上げされ、“電力ムラ”を温存するかのようなモラルハザードがここでも起きている。
 背景には、フクシマの教訓を忘れ、原発再稼働に突き進む安倍政権のエネルギー政策があることは疑いない。
 福島第1原発事故の収束には程遠く、検証も総括もいまだ不十分だ。なし崩しに原発を推進することなど到底許されない。共同通信社が昨年末に実施した世論調査では、原発ゼロ目標からの転換に反対が65・7%を占めた。政府と東電は国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。
 東京都知事選では、脱原発が最大の争点となる見通しだ。結果によっては、東電の再建計画の見直しにとどまらず、会社存続の是非があらためて問われるのは避けられないだろう。破綻処理も含め、あらゆる選択肢を排除することなく再検討するのが筋だ。