米軍機事故調査 飛行・訓練の中止が筋だ


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 いったいいつになれば危険と隣り合わせの生活から解放されるのだろう。米空軍嘉手納基地が昨年起きた2件の墜落事故に関する調査結果を公表したが、墜落再発の懸念は消えない。

 嘉手納基地は「再発防止策に自信がある」というが、県内の米軍機は墜落だけでも復帰後45件発生している。その都度、対策が取られたはずだが、「再発」が「防止」されたためしはない。少なくとも、事故の根本的な原因が分からない機種は飛行停止し、墜落事故が起きた種類の訓練は中止するのが筋だ。
 昨年5月に本島東海域で起きたF15の墜落は、油圧式の飛行制御補助システムが故障し、機体を操作できなくなったのが原因という。システムの電源を切れば操縦可能だといい、今後はそうするというが、そもそもなぜシステムが故障したのかが分かっていない。
 F15は嘉手納に配備された1979年以降、県内だけで9回も墜落した。4年に1回は墜落した勘定だ。民間の旅客機なら即刻飛行停止だろう。それなのに、故障の原因も不明のまま今後も訓練を続けるというのは、無責任すぎる。
 今回の事故で、操縦士は脱出し、機体は海に墜落した。だが94年には同じF15で同様に操縦士が脱出した後、農作業中の夫婦から50メートルの至近距離に墜落した例もある。今回が幸運だったにすぎない。
 県民の頭上を飛び交う以上、不安は拭えないのだ。基地周辺の市町村長が宅地上空の飛行停止を求めるのは至極当然であろう。
 昨年8月、キャンプ・ハンセンで起きたHH60ヘリの墜落は、2機で8の字飛行の低空飛行訓練をしていた最中だった。僚機との衝突を避けようと機体を傾けて急降下した結果だ。衝突の危険はないのに過度に急降下させた操縦ミスが原因と結論付けている。
 今後は機体の位置関係について乗員間の連絡を密にすると指導したというが、「連絡を密に」というだけで安心できるはずがない。
 米国内の基地は人家とかなり離れているから、その程度の措置で済むのかもしれないが、宅地に程近い県内の基地なら話は別だ。危険な訓練を繰り返すべきではない。
 沖国大ヘリ墜落事故では、ヘリの機体にあった放射性物質ストロンチウム90が飛散した。環境汚染の懸念もあるのだ。県土での危険な訓練は即刻中止すべきだ。