竹富の分離否定 国の強権的体質の表れだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 八重山の教科書採択問題で、採択地区の分割について見解を求めた県教育委員会に対し、文部科学省は分割を否定した。議論を重ねた県教委の提案を、文科省側が頭ごなしに拒んだ感が否めない。

 県教委は八重山地区3市町で使用する中学公民教科書が一本化されていない件で、石垣、与那国と異なり、国家主義色が強い育鵬社の教科書を採用していない竹富町を採択地区から分離する方針を固め、同じ意見の市町村ごとに地区を分割することについて意見照会していた。
 だが下村博文文科相は「一つの採択地区として設定すべきだ」と即座に否定的な考えを示し、文科省は「教科書の調査研究が可能かどうかなどを踏まえれば、八重山は一つの採択地区として設定すべきだ」と正式に回答した。県教委の質問に誠実に向き合った上での返答なのか、甚だ疑問だ。
 文科省は昨年11月に発表した教科書改革実行プランで「採択地区の設定単位を市町村に柔軟化する」と掲げていた。県教委はその点を挙げ、竹富町への是正要求を指示したことに疑問を呈していた。
 これに対し文科省は、市町村単位での設定については合併で「飛び地」となった特殊地域などを想定したものだとして、八重山地区の分割を否定した。だが改革プランの背景には、政府の行政改革委員会が現在の市郡単位の採択から将来的に学校単位とするよう検討を促した提言がある。文科省の説明はおかしい。
 竹富町は寄付を財源に生徒らに東京書籍の教科書を配布している。教科書無償措置法に違反するとして是正要求を指示した文科省の姿勢はそもそも疑問であり、県教委は「検定に合格した2教科書の一方の採択を違法とすることは合理性がない」と重ねて指摘している。
 県教委は「竹富町で教育の機会均等は阻害されていない」とも述べ、現場の授業に何ら支障が出ていない現状も冷静に報告している。文科省の回答を受け、宮城奈々県教育委員長は「(質問と)ずれを感じる」と語った。文科省の姿勢は地元側の議論を一顧だにしないように映る。
 米軍普天間飛行場の移設問題にも共通するが、国に「まつろわぬ民」を力ずくで従わせようという政権の高飛車で強権的な体質がより顕著になっていまいか。何度でも言うが、中立であるべき教育への政治介入はあってはならない。