辺野古代執行 強行に正当性はない


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 この国の自治は神話にすぎないのか。民意を無視して「粛々と」国策を押し付ける強権政治がまかり通っている。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古建設拒否を訴えて当選した稲嶺進名護市長に対し、安倍政権は市長権限を制限するために是正措置や行政代執行などを検討している。
 移設拒否を選択した民意を無視して、新基地建設を強行しようとする安倍晋三首相の政治手法に正当性はない。民主主義を破壊する権力乱用を許してはならない。
 地方自治法に基づき国が是正要求しても法的拘束力はない。国は違法確認訴訟を起こすこともできるが、違法が確定しても罰則規定はない。移設作業に伴う漁港使用許可などは、地方自治法で定める「自治事務」に当たり、国による代執行は認められていないはずだ。ただし、一連の過程で「名護市は違法行為をしている」という印象が一人歩きする恐れはある。
 県選出・出身の野党国会議員らに対し木原稔防衛政務官は「永田町(国会)の民意で言うと、自民党が多数派で野党は少数派だ。(名護市長選で敗れた)末松文信さん側も少数派だが、小さな声にも耳を傾けねばならない」と語った。自民党「1強」状態のおごりであり、都合のいい解釈にあきれるばかりだ。
 米軍は沖縄占領直後、住民がキャンプに収容されている間に土地を強奪して普天間飛行場を建設した。海外識者29人の「辺野古反対」声明が指摘するように、「戦後ずっと、沖縄の人々は米国独立宣言が糾弾する『権力の乱用や強奪』に苦しめられ続けている」のだ。
 かつてキャラウェイ高等弁務官は「(沖縄住民の)自治は神話でしかなく、存在しないものだ」と語り強権を振るった。安倍政権の姿勢はキャラウェイと変わらない。名護市長選で示された民意が存在しなかったかのように振る舞うことは「自治は神話」と言うのに等しいからだ。
 沖縄県民には人間として平等で、命が尊重され、幸福を追求し、自己決定する権利がある。「アメとムチ」をちらつかせれば沖縄は掌握できるという発想こそ、今や「神話」にすぎない。
 自民党所属国会議員、県連が県外移設の公約を覆し、仲井真弘多知事が埋め立て承認をしても大多数の県民は県外を求めている。安倍政権はこの事実を直視すべきだ。