春のセンバツ ダブル沖縄旋風を期待


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 第86回選抜高校野球大会(春のセンバツ)に、沖縄尚学高校と美里工業高校の出場が決まった。沖尚は選抜出場は2年連続6度目、甲子園は前身の沖縄高時代を含め春夏通算12度目の出場となる。美里工は春夏通じて初出場だ。

 猛練習に耐えてきた両校ナイン、本当におめでとう。沖縄と歴史的に縁の深い鹿児島県奄美市の大島高校の初出場もうれしい知らせだ。全出場校を心から祝福したい。
 県勢の2校出場は、興南と嘉手納が出場した2010年春以来、4年ぶり2度目の朗報であり、県民の喜びもひとしおだろう。
 沖尚は全国10地区の高校野球秋季大会の覇者が集う明治神宮大会で初優勝した。1999年と2008年の選抜優勝校・沖尚は3度目の優勝が懸かる。美里工は昨秋の県大会では沖尚を破り優勝した。九州大会では初の県勢決勝対決で沖尚に苦杯を喫したものの、実力ではまったく遜色はない。
 沖尚は神宮大会決勝で8点差の劣勢をはね返し優勝するなど、粘り強さと堅実な守りが持ち味だ。美里工は、県秋季大会で5試合中4試合で2桁安打を記録。県内屈指の打撃力を誇る。選抜で県勢同士の決勝対決を見たいものだ。
 沖尚の比嘉公也監督によれば、選手たちは神宮大会優勝におごることなく精進してきた。選抜で進化したプレーを見るのが楽しみだ。
 美里工は朝練ならぬ“朝勉”で多くの選手が電気工事士の資格を取得、野球と学業を両立させての晴れ舞台だ。集中力に期待したい。
 かつての県勢に指摘された「離島のハンディ」を、今の高校球児は微塵(みじん)も感じさせない。沖尚、美里工は、県外の強豪や八重山商工、宜野座、興南など県内のライバルと切磋琢磨(せっさたくま)しながら、たくましく成長した。両校選手、監督のたゆまぬ努力と探求心、チームワークにあらためてエールを送りたい。
 高校球児の活躍は、県民の「希望」である。沖縄社会がさまざまな政治・社会問題に直面する中、球児の活躍はそれと直接関係なくとも県民の閉塞感を振り払う力となろう。
 強く望みたいのはフェアプレーだ。良き選手であると同時に良心的な人間であってほしい。対戦チームへの敬意や、野球する環境を整えた学校や父母、OBなどへの感謝も忘れないでもらいたい。
 春の選抜に“ダブル沖縄旋風”が巻き起こることを期待したい。