増える孤立死 地域ぐるみの防止策構築を


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 2013年の1月~10月末までに那覇市内で孤立死した人は93人(男性66人、女性27人)に上り、孤立が原因とみられる自殺者も16人いた。那覇市社会福祉協議会が那覇、豊見城両警察署に聞き取りし分かった。過去の同様な集計と比べても孤立死に歯止めがかかっておらず、原因究明が急がれる。

 市社協の山城章地域福祉課長によると、孤立死のうち65歳以上が約7割と多い。30~40代の若年独居世帯でも増加傾向にある。超高齢化社会を迎え高齢者の生きがいづくりが課題となる中で、孤立死が後を絶たないのは由々しき事態だ。
 厚生労働省が分析した2010年と25年時点の都道府県別高齢者(65歳以上)人口予測によると、沖縄の高齢者人口はそれぞれ24万人超と35万人超だ。増加率は全国1位の46%で、2位埼玉県の35%を大きく上回る。孤立死に占める高齢者比率や沖縄の高齢化加速を踏まえれば、孤立死対策は県内自治体の喫緊の課題だ。
 那覇市など自治体では、災害時に家族などの支援が困難な「災害時要援護者」の対象を、65歳以上の独居高齢者らに拡大する方向とされる。この台帳を自治会などで活用できれば、独居高齢者の実態把握、個別の見守りを強化でき、孤立死予防も期待できよう。もちろんプライバシー保護が大前提だ。
 「孤立死」ゼロを目指して厚労省が設置したコミュニティーづくり推進会議は、08年にまとめた報告書で「孤立死」予防型コミュニティーづくりを提案している。単身高齢者や高齢者夫婦のみの世帯の増加(15年には世帯主65歳以上世帯の64%)を予測し、孤立死の日常化を見据えてのことだ。
 強い地縁・血縁で結びついた沖縄の農村社会的なコミュニティーは都市部を中心に崩壊し、福祉・教育機能なども脆弱(ぜいじゃく)化している。
 こうした中、孤独死予防の担い手としての、新たなコミュニティー創出は時代の要請と言えよう。沖縄の家族構成も、かつての多世代同居型から核家族型に大きく変化しており、今後、子どもが独立するに従って高齢者の孤立死のリスクが高まるのは間違いない。
 今、手を打たなければ、例えば定年退職の喪失感から孤立生活に陥り、孤立死の道を歩む人が続出しかねない。NPO関係者を始め、社会全体で新しいコミュニティーの創出に向けた知恵を絞りたい。