国民世論 沖縄の民意を伝えたい


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 民意を無視する安倍政権の姿勢を、多くの国民が批判的に受け止め、冷静に見ているようだ。

 共同通信社の全国世論調査で米軍普天間飛行場の辺野古移設計画に対し、反対派の稲嶺進名護市長が再選されたことを受けて「市長の理解が得られるまで中断する」と答えた人が42・9%に上った。「計画を撤回」の17・9%と合わせて6割が移設を強行しようとする政府・与党に批判的だ。
 辺野古移設を「予定通り進める」との回答も31・7%あったが、昨年12月末に行われた共同通信の全国調査で辺野古移設に「賛成」が49・8%と、「反対」の33・6%を上回っていた状況が一変し、移設への反対・慎重論が急増した。
 昨年末の調査は仲井真弘多知事が移設に向けた埋め立てを承認した直後の実施で、これが影響したと思われる。今回は市長選で反対派候補が前回選挙よりも差を広げて勝利した事実を、多くの国民が率直に評価し、移設問題について再考していることの証左だろう。
 市長選の2日後に移設に向けた入札を開始した横暴さがなおさら際立つ調査結果とも言える。市長選で「市長権限を行使しても移設を阻止する」との強い覚悟を示した候補を再選させた民意を、露骨に踏みにじる安倍政権の体質があらためて問われよう。
 名護市長選と同じ19日に行われた福島県南相馬市長選では「脱原発」を訴えた無所属現職候補が再選された。今回の世論調査では原発再稼働に反対するとの回答が60・2%と賛成のほぼ倍に達した。再稼働問題でも安倍政権の方針に否定的な世論が鮮明となっている。
 安倍晋三首相には、「国策」に反対する地方を組み敷くのではなく、国民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、施策の誤りを正すことこそが民主主義国家の指導者の役割であると、重ねて指摘しておきたい。
 今回の世論調査で、名護市民や県民の思いが国民に十分浸透したと受け取るのはもちろん早計だ。だが仲井真知事の埋め立て承認で全国に広がった「沖縄は金で転ぶ」といった誤解を市民の「良識」(稲嶺氏)がかなり解いたことは確かではないか。
 沖縄の主張や思いを全国に広く理解してもらうことは、基地を押し付けようとする権力と対抗し、問題を解決していくためにも不可欠なことだ。あらゆる知恵を絞り、その方策を考えたい。