海外識者100人超 声明を最大限生かそう


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 世界の目が沖縄に集まり始めている。米軍普天間飛行場の即時返還と辺野古新基地建設反対に賛同する海外の識者ら呼び掛け人が100人を超えた。ノーベル賞受賞者など幅広い分野で影響力を持つ人々が連なり、名護市長選で市民が下した決定を「支持」する声明を発表した。

 新基地建設を拒否した名護市長選の結果を無視して、建設を強行する日米両政府の姿勢は、世界的に影響力を持つ識者らの知るところとなり、国際的な署名運動へと広がっている。「普天間・辺野古」が国際化しつつある。海外の識者が沖縄に目を向けた今、支持表明を最大限に生かすよう知恵を絞る時だ。
 今回、平和学の第一人者として知られるヨハン・ガルトゥング氏が呼び掛けに加わった意義は大きい。1996年に来沖した際、沖縄の現状を「平和と対立する構造的暴力の下に置かれている」と指摘した。県民の主権が無視され、沖縄に基地を押し付ける差別が「構造的暴力」に当たるだろう。
 ガルトゥング氏は「構造的暴力」を断ち切ることが「積極的平和」だと定義している。この理論によると、普天間飛行場の閉鎖・撤去、新基地建設断念は「積極的平和」につながることになる。学界で定着している理論だ。軍事に偏重した安倍晋三首相の「積極的平和主義」とは似て非なるものだ。
 ガルトゥング氏はまた「沖縄はアジアにおける中立国スイスの役割を果たせる」と提案している。18年前の提言だが、沖縄の将来像を考える上で示唆に富む。
 海外識者の声明の特徴は、民主主義、人権といった「普遍的価値」に照らして、名護市民の決定を支持していることだ。
 一方、安倍首相は民主主義の基本である選挙結果を無視して、選挙の二日後に新基地建設の準備に入った。開会中の衆院本会議では「民主主義に反しない」と開き直った。自身の行為が「普遍的価値」に反するため、海外識者から批判を浴びていることを、自覚すべきだろう。
 世界の目を沖縄に引き寄せた原動力は、名護市長選で明確に辺野古拒否の審判を下した名護市民の行動であり、日米両政府の圧力に屈せず自らの尊厳をかけて異議申し立てを続ける県民の不退転の決意である。日米両政府は広がりを見せる海外識者の声に耳を傾け、考えを改めるべきだ。