免許取得費免除 民間支援拡大を歓迎したい


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 児童養護施設、ファミリーホーム、里親家庭で暮らす若年者を対象に、普通自動車の運転免許取得費用の一部免除が県内で始まる。県内21カ所の教習所でつくる県指定自動車学校協会と県が協定を結び、4月1日から免除を導入する。社会的養護が必要な青少年に対する自立支援の枠組みができることは画期的なことであり、高く評価したい。

 県内の社会的養護が必要な子どもは2014年1月1日現在、527人に上る。児童福祉法では18歳になると自立とみなされ、施設入所者は施設を出なければならず、里親委託も解除される。
 大学進学、就職のいずれかを選択するにしても、車社会の沖縄では普通自動車免許は必要不可欠だ。しかし免許取得費用に通常かかる24~25万円もの大金を本人1人が全て工面するのは難しい。現行制度では国が施設や里親家庭に支給する「資格取得特別加算」の5万5千円を充てることもできるが、十分とは言えなかった。
 今回の協定締結によって、協会加盟の各教習所が1人当たり10万円を免除する。免除対象者を年間30~40人と想定しており、年間最大400万円程度の免除になる見通し。協会の積極的な社会貢献を歓迎したい。
 厚生労働省の調べでは、児童養護施設の生徒の大学などへの進学率は約1割にとどまり、一般家庭は過半数が進学するのに比べ、大きな開きが生じている。国の支援制度では、施設対処時に大学進学等自立生活支度費として7万9千円が支給されるが、多額の授業料を支払うには十分とはいえない。子どもたちが将来を選択する機会に格差があってはならない。就職、進学双方で多角的支援が必要だ。
 社会的援護が必要な子どもへの支援の取り組みは県内で少しずつ芽生え始めている。非営利団体「にじのはしファンド」が賛同者から会費や寄付を募り、児童養護施設から進学を希望する人を対象に生活費を支援している。また沖縄大学は昨年、児童養護施設や里親家庭の高校生を対象にした奨学制度を始め、来年入学の生徒5人の授業料を4年間全額免除する。こうした民間支援のさらなる充実を期待したい。
 一方で国の支援制度が不十分であることも否定できない。この子たちの能力を伸ばせないことは社会の損失であり、公費による支援拡大も具体的に検討すべきだ。