ドラム缶問題 米側は全ての情報開示を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 最初の発見から7カ月余りになる。まだ所有者もはっきりしないという説明には納得がいかない。

 昨年6月から米軍基地返還跡地の沖縄市サッカー場でダイオキシン類を含むドラム缶が見つかっている問題で、新たなドラム缶が次々見つかっている。1月末までに計83缶が発見されたが、昨年と同様に今回もベトナム戦争当時の枯れ葉剤製造大手「ダウ・ケミカル」の社名が記載されたドラム缶が見つかった。
 米軍のものではないかという疑いがさらに強まるのは仕方のないことだ。だが防衛省は「米軍の所有物だったのか、日本側のものなのか、確認できていない」と説明している。日本側の照会に対し、米側の回答がまだないというが、少なくとも発見場所はかつて米軍基地だった土地だ。米軍側の対応は無責任のそしりを免れない。
 環境基準値を大幅に超えるドラム缶が埋まっていたサッカー場の表層土からは、沖縄市の調査で環境基準値を上回るヒ素も検出された。県による検査では水質の基準超過値は見つからなかったが、今回新たに発掘されたドラム缶の一部からも黒い液体の漏えいや油のような臭いが確認されたという。
 サッカー場に隣接する米軍嘉手納基地内の小中学校で嘉手納基地が保護者向けに開いた説明会では、土壌や水の汚染はないという発表に、保護者から「説明が十分でない」という不満や不安の声が上がったという。当然だろう。
 誰が何の目的で所有していたどういう物か、なぜ大量に捨てられたのか。真相はまだ分からない。
 猛毒のダイオキシン類を含む枯れ葉剤は、復帰前の1968~69年に読谷村にあった軍用犬訓練場で定期的に散布されていたことが本紙の取材で明らかになった。枯れ葉剤は当時どこに貯蔵され、一体どのように使われたのか。
 その履歴や環境への影響など全ての情報を即座に開示する義務が米軍にあるのは当然だが、米側任せではいけない。日本政府が県や地元を含めた調査機関を設置し、調査に乗り出すべきだとあらためて求めたい。
 日米両政府は新たな負担軽減策として、環境保全面で日米地位協定を補足する新協定について協議するとしているが、米軍の基地管理権を認めた地位協定本体を改定することが筋だ。今後の基地返還・跡利用の成否を左右するだけに、地位協定を聖域にしてはならない。