秘密法諮問会議 乱造への歯止め役果たせ


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 昨年12月に成立した特定秘密保護法は、閣僚ら行政機関の長が指定する特定秘密の範囲が曖昧で、その裁量によって特定秘密が乱造されかねない。

 共同通信が1月下旬に行った世論調査で、法の修正・廃止を求めた回答は74%に上った。秘密法の重大な欠陥は全く是正されないまま、安倍政権は年内の施行に突き進んでいる。膨大な情報が行政府の思うままに取り扱われる懸念が拭えない。あらためて法の廃止を強く求める。
 世論の厳しい批判を受け、臨時国会の審議最終盤で安倍政権がドタバタと打ち出したのが秘密指定を監視する四つの監視機関だった。
 そのうち、官僚以外のメンバーで唯一構成し、政府の外から意見を出す情報保全諮問会議が1月に始動した。秘密指定や解除の基準の在り方などの検討に入っている。
 だが、その役割は安倍晋三首相に対する助言にとどまる。特定秘密の中身まで検証する権限は与えられていないのである。
 政府の独断的、恣意(しい)的な法の運用に歯止めがかけられるだろうか。実効性には大いに疑問がある。
 7人のメンバーの選定には安倍首相の意向が強く反映された。法に反対する日弁連の弁護士もいるが、大半が法に賛同している。
 初会合で、座長に就いた渡辺恒雄氏(読売新聞グループ本社会長兼主筆)は「どの政権であろうと言論・報道の自由を抑制してはならない」とあいさつした。
 だが、その前段で渡辺氏は「今回の法律は二重、三重に拡大解釈、権力の乱用を縛っているので大丈夫だと思う」と語っている。
 「知る権利」を持つ国民の代弁者として権力を縛るのではなく、法の是認の色合いが濃い形式的な議論を重ねるなら、単なる追認機関に堕してしまうだろう。
 諮問会議を形骸化させないためにも会議の公開は不可欠だ。だが、初会合は冒頭以外は非公開だった。公開された初会合の議事録は、発言者名を伏せた要旨でしかないが、出席した官僚はその発言を全て把握している。
 政府は「発言者を萎縮させないため」とするが、「秘密」の在り方を問い直す会議だからこそ、全文公開が必要ではないか。
 国民の大半が強行成立に疑問を抱いている。国会は秘密指定をチェックする制度創設の論議を始めているが、それ以前に法を廃止し国民的議論をやり直すのが筋だ。