NHK経営委員 公共放送の信頼性損なう


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 公共放送を代表する立場の人々から適格性を疑わせる発言が相次いでいる。就任会見での発言が問題となった籾井勝人NHK会長に続き、今度はNHK経営委員の言動が物議を醸している。

 安倍晋三首相の「お友達人事」で就任したといわれる人々だ。しかも国会での追及に対し、首相はかばい立てする姿勢に終始している。内外の信頼を大きく損ねる事態だ。任命責任を問わざるを得ない。
 NHK経営委員の小説家・百田尚樹氏は東京都知事選に立候補した田母神俊雄氏の応援演説で「南京大虐殺はなかった」と述べた。
 外務省のホームページにはこうある。「日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない。(中略)被害者の具体的人数については諸説あり、どれが正しい数かの認定は困難」。政府の公式見解は殺害・略奪の存在そのものは認めているのだ。
 放送法31条はNHK経営委員の資格として「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ」ることを挙げる。政府見解を真正面から否定する人物が適格だろうか。
 「放送の不偏不党、真実と自律を保障することで、放送による表現の自由を確保する」のが放送法の目的だ。政府は個人的演説は構わないとの姿勢だが、特定候補の応援は「不偏不党」という放送法の精神にもとるのではないか。
 同じく経営委員の長谷川三千子埼玉大名誉教授のコラムも問題視されている。出生率を低下させたとして女性の社会進出を敵視し、「女性も働くことができる社会を求めるのは誤り」と断じていた。
 欧州では、育児との両立支援の策を講じれば出生率は向上した。性別で人権を限定しようとするのは許し難い。コラムは時代錯誤と批判されるが、そもそも時代錯誤ですらない。明治以前、女性は立派な労働力で、むしろ近代の一時期こそ本来の姿でないのだ。事実に基づかない非合理的思考と言わざるを得ない。
 さらに、新聞社で拳銃自殺した右翼団体代表を礼賛していたことも発覚した。言論機関に拳銃を持ち込み、圧力をかけた人物の、まさにその行動を賛美したのだ。
 そんな人々がNHKの最高意思決定機関にいる。報道・制作の現場は萎縮しかねず、国外からは異質の国と見られよう。公共放送の経営陣からは退場願うほかない。