ドラム缶投棄 二重基準を廃し対処急げ


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 米軍嘉手納基地跡地にある沖縄市サッカー場の土壌汚染問題で、米軍の関与を裏付ける有力な証言が新たに得られた。猛毒ダイオキシン類を含むドラム缶という物的証拠や地域住民らの証言に加え、除草剤投棄に直接関わった退役米軍人の証言は決定的と言える。

 米軍は土地の使用履歴がないと頬かむりを決め込むのではなく、環境汚染を引き起こした当事者責任を直ちに認めるべきだ。日米両政府は現場の環境浄化と併せ、徹底した情報開示と真相究明を急がねばならない。軍作業員や地域住民の健康被害、周辺環境への影響など、追跡調査にも取り組む必要がある。
 証言者は米在住のロナルド・トーマス氏(61)で、父親の駐留に伴い嘉手納基地に住んでいた高校生当時、1969年と70年のアルバイトの作業内容を明らかにした。
 トーマス氏は「非公式なごみ捨て場で除草剤などのドラム缶を捨てた」と明言。「ドラム缶は55ガロン容量で、白地で『除草剤』『嘉手納基地』と書かれていた」と具体的に説明した。78年には軍人として沖縄に赴任しており、記憶は鮮明で信憑(しんぴょう)性は高い。ダイオキシン類を含む除草剤はベトナム戦争当時、枯れ葉剤として使用されており、本質的に両者に違いはない。
 米軍は、米本国では基地の汚染地点や物質の使用履歴を厳密に記録するだけでなく、履歴がない場合は、退役軍人の聞き取り調査などで補完して環境浄化に努める。
 地中から83本ものドラム缶と汚染物質が見つかっているにもかかわらず、関与も責任も否定し続ける沖縄での対応とは対照的だ。トーマス氏の証言についても「あいまい」として取り合おうとしない。露骨な二重基準は言語道断だ。
 こうした米軍の傲慢(ごうまん)な対応を許している根本原因は、米側の浄化義務を免除した日米地位協定にある。恩納村や北谷町など、基地返還跡地から汚染が見つかる例が後を絶たないのはこのためだ。
 沖縄側は、返還前の立ち入り調査や、汚染土壌の除去など原状回復を明記するよう協定の抜本改定を求めているが、実現のめどは立っていない。
 日米は嘉手納より南の施設・区域の返還で合意したが、沖縄市の事例が「氷山の一角」との疑念は増すばかりだ。県内での枯れ葉剤の貯蔵や使用実態を明らかにするためにも、不平等な地位協定の抜本改定に直ちに取り組むべきだ。