島尻氏発言 暴政容認は辞職しかない


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 夜郎自大と事大主義はここに極まった感がする。

 県選出の島尻安伊子参院議員が米軍普天間飛行場の辺野古移設を阻止すると主張する稲嶺進名護市長を「権限の乱用」と批判、反対運動をあらかじめ弾圧するかのような「対策」を政府に迫った。
 島尻氏は2010年の参院選で県外移設を公約に掲げて再選した。しかし、西銘恒三郎衆院議員に次いで公約を破り積極的辺野古推進派に転じた。有権者を裏切った政治家が議場に立つのはおかしい。速やかに議員辞職すべきだ。
 参院選当選直後の本紙インタビューを思い起こしてほしい。辺野古反対を掲げて稲嶺進氏が初当選した名護市長選に触れ「地元の合意はなくなった。民意は辺野古反対。自民といえども地元合意なしに米軍再編を推し進めることはできない」(10年7月13日付「琉球新報」)と明言している。
 稲嶺氏は先月、辺野古阻止を掲げ大差で再選された。島尻氏が4年前に語ったように「民意は辺野古反対」で一貫している。公約を破った島尻氏に市民が選んだ稲嶺氏を攻撃する資格はない。選挙結果を受け入れないのは民主主義の否定と同じであり、「言論の府」にいる資格もない。
 また、反対運動に対する「危険な行為に先んじて対策を打つことが必要」という主張は、犯罪前に身柄を拘束する「予防拘禁」の発想に近い。思想ではなく犯罪行為を処罰するという刑事法体系の基本原理から逸脱し、戦前の治安維持法を想起させる。
 民意を無視して国家権力の乱用を許せば独裁政治と変わらない。よりによって県選出議員が国の暴力的な政治、市民運動弾圧を勧めるかのような発言をしたことは言語道断だ。発言撤回を求める。
 公約を破った後の島尻氏は、自民所属国会議員や県連に圧力をかけて公約を撤回させた政府・自民党と一体化している。米軍普天間飛行場の県外移設を求めて一つになった沖縄の民意を、国のお先棒を担いで内部から崩すような行為は目に余る。
 沖縄の戦後史は、日米両政府の意向に忠実な代理人たち(政治家、経済人など)が必ず存在していたことを教えてくれる。70年続く「軍事植民地状態」を終わらせ、「自己決定権」を行使する沖縄の未来を展望するとき、国家権力の代理人はもう要らない。