ソチ五輪 永続的な平和につなげたい


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 雪と氷の祭典・ソチ冬季五輪が開幕した。史上最多の87カ国・地域から選手が参加する。30年前のサラエボ大会が49カ国・地域だった。冬季競技が世界に広がっていることを示す五輪といえそうだ。

 ロシアでの五輪開催は1980年のモスクワ夏季大会以来で、ロシア初の冬季五輪となる。34年前の大会ではソ連のアフガニスタン侵攻を理由に、米国や日本など西側諸国がボイコットし、戦争が大会に影を落とした。
 今大会でもいくつかの懸念がある。最大はテロの脅威だ。北カフカス地域を拠点とする複数の武装勢力が五輪攻撃を宣言している。このためロシア治安当局はスポーツの祭典とは思えない異例の厳戒態勢を敷いている。暴力は容認できず、選手、観客、住民の安全を脅かす武装勢力のテロ宣言は強く非難されるべきだ。その一方で、力に頼ったプーチン政権の強権体質による武力に守られた五輪は、平和の祭典からは程遠い。
 またロシアの「同性愛宣伝禁止法」の成立も影を落としている。性的弱者の人権を認める方向の西欧価値観と異なる。五輪と「人権、宗教、政治、その他の理由に基づく国や個人に対する差別」は相いれない、とする五輪憲章の精神にも合致していない。オバマ米大統領や英国、フランス、ドイツなど首脳の開会式欠席は差別への反発が根底にあり、ロシアはこうした声に真剣に耳を傾けるべきだ。
 国連総会(193カ国)は昨年11月、本会議でソチ五輪とパラリンピックが開催されている期間中は武力紛争を控え、休戦するよう加盟国に求める決議案を議場の総意として無投票採択している。国連の潘基文(バンキムン)事務総長も「五輪休戦」を呼び掛けている。停戦実現が困難な情勢が続くシリア内戦のほか、中央アフリカや南スーダンなどでも内戦が続いている。
 世界が混迷している今だからこそ、世界の若者が集うスポーツの祭典開催で希望を見いだし、永続的な平和や繁栄が各地に広がる契機とする必要がある。この機会に停戦が実現するよう世界が力を合わせるべきだ。
 日本はソチ大会に海外で開催される冬季五輪史上最多の248人の選手団を送った。2020年の東京五輪開催決定を追い風に、国民に活気、活力を与えるような日本勢の活躍にも期待したい。